亜利馬&潤歩、inワンダーランド -6-

 分かってる。潤歩の好みはもちろん分かっているつもりだ。
 ベッドに磔にされて無抵抗になったやられ役の俺を見て、ドS潤歩が興奮しない訳がない。
 俺だって別にこれが会社やコラボ先から普通にお願いされたことだったら、しぶしぶだけど了承していた。これも仕事だと思って言う通りにしていた。
 だけどこれが有栖の個人的な命令だと思うと──

「潤歩さんっ、本当に駄目ですって! あっちのフロアには山野さんもいるんですよ!」
「大丈夫、完全防音だしバレないよ。潤歩さんも、亜利馬もいっぱい気持ちいい声出していいからね」
「──って、やめて潤歩さん! 潤歩さんてば!」
 仰向けに固定された俺の上を跨ぎ、潤歩が伸し掛かってくる。その目はいつも以上に鋭さが増していた。
「う、潤歩さん……」
 そのまま身を倒してきた潤歩が、俺の耳元で「亜利馬」と低く囁いた。
「……悪い。頭じゃ分かってるんだが、体が言うこと聞かねえ。今お前を抱かねえとおかしくなりそうだわ……ていうかマジで今のお前、エロすぎ」
「っ……も、もしかして有栖。潤歩さんの紅茶に何か入れて……!」
「素直になれるお薬を、ちょっとね。射精すれば収まるから、この際ヤるっきゃない!」
「こ、このド変態マッドサイエンティスト!」

 有栖が再び自分の椅子にあぐらをかいてデスクに向かい、パソコンを開いて言った。
「じゃあ、実況カモン!」
「んんっ……」
 潤歩の唇が俺の口を塞ぐ。普段よりも荒々しく舌が絡んでくる。男らしいのに柔らかい唇と舌、それから下唇のピアスが当たる、撮影でのいつもの感触……。こうされると俺だって余裕なんか全然持てなくて、さっきまで散々喚いていたのに途端に口数が少なくなってしまう。
「ん、……」
 舌が触れ合う音と、唇を啄まれる音。聞き慣れているはずなのに、しかも相手は何度も仕事で絡んできた潤歩なのに、どうしてこんなにドキドキしてしまうんだろう。
「はぁ、……」
「クッソみてぇに興奮する。……亜利馬、お前今までで一番エロく見えるぜ」
「んぁ、あ……う、潤歩さんも……その目、ぞくぞくします、……」

 パソコンのキーボードを叩きながら、有栖がつまらなそうに言った。
「俺、ラブラブなシーンは早送りするタイプなんだよね。すっ飛ばして早く合体して欲しいなぁ」
「うっせえ、ニセ亜利馬。黙ってろ」
「ひゃあ、しびれる~」
 潤歩が再び俺の唇を塞ぎ、今度は同時にベルトを外してきた。あっという間にジーンズが脱がされ、色気も何もない俺の下着が露出する。
「や、……潤歩、さんっ……駄目です、こんなのって、ぇ……。お、俺も、変な気分になっちゃ、……」
「てめぇも黙ってろ。さっさと終わらせた方がいいだろ、こんなモン」
 心臓がドクドクするのは、潤歩がいつもより三割増しで男前に見えるのは、多分……キスによる潤歩の唾液を通して俺の体内にも「素直になれる薬」が入ってしまったからだ。有栖の開発した薬が潤歩をその気にさせるだけで終わるはずがない。
 有栖のイタズラのターゲットはいつだって俺だったんだから。