亜利馬&潤歩、inワンダーランド -3-

 有栖は昔から変わった奴だった。
 悪趣味と言ったら失礼だけど、ちょっと変なデザインの珍しい雑貨を集めるのが好きな奴だった。目玉のネックレスとか、一つ目のテディベアとか、キノコ型のリュックサックとか、葉っぱ型の機能性皆無な傘とか、どこで買ったんだって感じの物ばかり持っていた。
「亜利馬は患者さんね」
 そんな有栖と従弟同士だった俺は、子供の頃からよく有栖の「実験台」にされていた。どこを触れば体が反応するとか、何を言えば大人しくなるとか。有栖はよく俺をベッドに寝かせて様々な反応をメモに取っていた。小学校の時からだ。

 よく「子供の頃は女の子の方がおませさん」なんて言われることが多いけれど、有栖は男でも立派な「おませさん」だった。小学三年の頃には既に「カレシ」がいたし、奇抜で個性的な服が可愛いと女の子からも人気があり、どう振る舞えばターゲットが自分を好きになるか、そればかり研究し実践していた。
 子供ながらに、コイツは只者ではないなと感じていた。有栖もまた高校卒業後に上京したと聞いていたから、どこかで連絡を取って会えればいいなと思っていたけれど。
「………」
 だけどまさか俺より一つ年上の十九歳という年齢で、アダルトグッズメーカーの商品企画開発部リーダーになっていたなんて。

「元気そうだね亜利馬! 二、三か月前にたまたまDVDで亜利馬のこと見た時は、本当にびっくりしたよ」
「お、俺だってびっくりしたよ。まさかこんな場所で有栖に会うなんて……」
「ウチの商品でAVメーカーとコラボって話が出た時に、真っ先に亜利馬のこと思い浮かんでさ。お前がびっくりする顔想像したらもうわくわくが止まらなくて、今日という日をずっと楽しみにしていたんだ」
「おじさんとおばさんは元気?」
「ああ、元気だよ。こないだ帰省した時に亜利馬んちのパパとママにも会ったけど、元気そうだったね。何より二人とも亜利馬がAVやってるって知ってることに一番驚いたけど」

 身内話に花を咲かせる俺達を見て、山野さんと潤歩が声を潜める。
「従兄弟っていっても、見た目は亜利馬そっくりだな。テンション高めなのは向こうの方だけどよ」
「ああ、俺も正直言って驚いている。まさかここで亜利馬の身内が出てくるとは……」
 白太さんが紅茶のおかわりを淹れてくれて、もう遠慮のなくなった俺はクッキーを摘まみながら有栖に言った。
「それで、コラボ企画の説明って何なの? その前にどうして俺と潤歩さんを呼んだのさ?」
「本当は愛しの獅琉様を呼びたかったけど、ブレイズのウケ専っていったら亜利馬だけでしょ。それから潤歩さんは、グループ内で一番アレがデカいって聞いたから。この二人をモデルにした商品なら売れるかと思ってさ」
 そこで白太さんが俺達三人に冊子を配ってくれた。今回のコラボ案の企画書だ。

「簡単に言えばさ。亜利馬モデルのアナルホールと、潤歩さんモデルのディルドを作らせてもらいたいんだ」
「………」
「それを使った映像を撮ってもらえるなら資金はいくらでも出すし、ここの設備も無料で貸し出し可能だよ。ユーザーに受けたらゆくゆくは他メンバーのオモチャも検討したいと思ってる。もちろん売上の何割かは亜利馬たちにお支払いするしね」

 企画書には俺の内部を再現したオモチャの形が精密なグラフィックで描かれていて、各部位の細かい説明もびっしりと載っている。
 前に竜介達と試した時はお湯で温めていたけれど、これはスイッチを入れれば自動で温まるのだそうだ。しかも内壁に振動機能が搭載されていて、ペニスをずっぽり包んだまま容赦なくぶるぶる震え続けるらしい。
 潤歩のほうもディルドとはいえ五パターンのバイブレーション機能が付いていて、しかもそれだけではなくピストン機能にスイング機能まで付いていた。グラフィックだけでも凶悪な形だ。潤歩のサイズと質感を完全再現するのが売りらしい。

「どうかな? これなら絶対売れると思うんだよね。ブレイズのブランドが付いてるのも大きいけど、普通にオモチャとしても良さげだろ?」
 自信満々でふんぞり返る有栖と、その後ろでニコニコしながら立っている白太さん。俺は顔が熱くなるのを感じて企画書を閉じ、可否は山野さんと潤歩に任せることにした。