亜利馬&潤歩、inワンダーランド

潤歩(ウルフ)2/14生まれ 21歳
好きな男性のタイプ:手のひらで転がせる奴
最近はまってるもの:ハバネロサンド
「冬生まれだからって寒さに強い訳じゃねえんだ。風邪ひくなよ!」

「えっ? オモチャメーカーとのコラボレーションですか?」
「ああ、オモチャと言ってももちろん大人の玩具だがな」
 今日は俺と潤歩の二人だけが山野さんから呼び出され、少し変わった仕事の話をされることとなった。場所は本社六階の面談室と呼ばれる、ちょっとした打ち合わせなどを行なう小さな部屋だ。
「でも、何で俺達なんだ? しかもいきなり」
 潤歩がテーブルに身を伏せ、大きなツリ目で山野さんの顔をじっと見上げる。

「大手アダルトグッズメーカーの『バッドアリス』って知ってるか」
「知らねえ」
「全然聞いたことないです」
「そこの商品開発部がお前達ブレイズの大ファンだそうで、是非コラボ商品をと企画書を持って来られてな。その熱意と企画内容をウチの代表も偉く気に入ったらしく、お前達に白羽の矢が立ったということだ」
 そう言って山野さんが自分のノートパソコンを開いて俺達に画面を見せてくれた。

 Bad Alice──何だかカラフルでごちゃごちゃしていて、それこそ海外の子供向けオモチャサイトみたいだ。
 俺が前に買ったオーソドックスなバイブやアナルホールとは全く違う、デザイン一つ取っても可愛いのからカッコいいのまで沢山ある。パッケージだけではアダルトグッズにはとても見えなくて、どれもこれも普通のオモチャ、もしくはお菓子の箱みたいだ。
「カオスだな」
 潤歩は少し引いているが、俺はその遊び心に逆に惹かれていた。

 商品というものはパッケージを見ただけで「何なのか」「どう使う物なのか」が分かる方が良いに決まっている。だけどアダルトグッズに関して言えばその通りではなく、万が一家族に見つかっても上手くカバーできるようなデザインの方が好まれる傾向にある。
 だけどこの会社は全くそんなことを考えていなくて、売上や人気よりもただただ自分達のポリシーに則り心底楽しんでいるような感じが伝わってくる。それが俺には魅力的だった。

「でも、コラボって言っても俺達はどうすればいいんですか?」
「アホかよ亜利馬。大体想像つくだろうが、そんなの」
「……え?」

 土日を挟んで翌週の月曜日。
 俺と潤歩は山野さんの運転する車で都内某所にある「バッドアリス」の本社へ向かった。

「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
 サイトはあんなにポップだったけれど意外にもというか、普通の綺麗な事務所だ。
 ただやっぱり小さな遊び心があちこちに散りばめられていて、設置されている消火器の後ろからウサギのシルエットが覗いているような絵が壁に描かれていたり、廊下に並ぶドアのノブに「Pull me」と書かれていたり、いちいち演出が凝っていて可愛らしい。

「こちらで座ってお待ち下さい」
 スタッフさんに案内され、俺達は商品開発部の広いフロアへと通された。
「わ……!」
 四方の壁いっぱいに森の風景が描かれている。大きな木に花、キノコに切り株、小鳥も。
 フロア中央には可愛いソファとテーブル。お茶と一緒にオシャレなアイシングクッキーまで出してもらって、俺はすっかりこの会社のコンセプトを気に入ってしまった。
「何か楽しそうな所ですね。色々見てるだけでわくわくします」
「俺は苦手だ、こういうの。落ち着かねえ」
 潤歩は音を立てて紅茶を啜りながら組んだ右脚の足首をぐるぐると動かしている。山野さんは普段通り落ち着いた様子でタブレットを操作している。俺達三人はソファに並んで座り、大人しく向こうの担当者が現れるのを待っていた。