亜利馬、それから4人の先輩たち -3-

 *

「潤歩さん、焦ってたでしょ。一瞬茫然とした顔になってた」
「あいつが台詞、……ていうか段取り間違えるのって珍しいからな。でも焦ってねえし」
 獅琉と潤歩の撮影が終わって、今度は俺と潤歩のサイト用写真撮影だ。場所を本社ビルに移し、七階の第一写真撮影スタジオへと移動する。

「ていうか、それだけ俺のテクが良かったってことだろうがよ」
「でも、絡み本番の時は獅琉さんにやられっぱなしだったじゃないですか」
「あっ、あれはそういう設定だったからだ! タイトル知ってんだろ、『淫乱新入社員』だぞ」
 フヒヒ、と笑って、俺は潤歩の両肩に腕を置いた。
 少しだけ背伸びをして、潤歩の唇に軽く口付ける。
「そのままキープお願いしまーす」
 シャッターが切られて行く。ストロボが光る。足がプルプルと震えだして、潤歩が腰を支えてくれた。
「はい、オッケーです」

 今度は潤歩が後ろから俺を抱きしめ、耳元に唇を寄せてきた。
「てめえも覗き見しながらギンギンにしてたんだろうが」
「してないですっ!」
「亜利馬くん、顔崩さないでねー」
「あっ、す、すいません! ……してないですって」
「嘘つけ、今日のズリネタ決定だろ」
「………」
 口も悪ければ品もない。俺は仕方なく黙り込み、カメラのレンズに集中した。

「そういや亜利馬。荷物届いたの後で届けに行ってやるよ」
「えっ、何でしたっけ?」
「お前が自分で頼むの恥ずかしいからって、俺の住所と名前貸してやっただろうが。ぶっといバイブと最強のオナホ──」
「しっ、しぃーっ! 潤歩さん、声でかいっ!」
「亜利馬くん、もう少しだから頑張ってー。で、バイブが何だって?」
 ……最悪だ。

 通販で注文したバイブ「君の王子さま☆ミラクルラージサイズ」は別に俺が欲しくて買った訳ではなく、次の撮影で行なう「道具攻め」に対する予習目的で購入したものだ。どれを選べばいいのか分からなくてたまたまそこにいた潤歩に見立ててもらい、ついでに潤歩のおすすめオナホールも一緒に注文したということ。

 正直言って俺は、オナニーで道具を使ったことがない。通販サイトを見ていて知ったのだけど、オナニー大国日本には驚くほど多種多様な用途で使えるエログッズが生産されている。しかも殆どの商品に結構な数のレビューが付いていて、俺には違いが分からないけどバイブ一つ取っても評価の良し悪しはピンキリだそうだ。

「はい、お疲れ様でした! 終了です!」
「お、お疲れ様でしたっ!」
 ようやく写真撮影が終わって、俺はスタッフの皆から質問攻めされる前に超特急で着替えを済ませ、ダッシュで撮影部屋を出た。