亜利馬、職業AVモデル -5-

「亜利馬は、どういうの想像してたの?」
 獅琉に訊かれた俺は、テーブルに頬杖をつきながらむくれたように唇を尖らせてそれに答えた。
「俺は、学園ものなら皆がそれぞれ生徒会の役職に就いてて……力を合わせて学校の謎を解決する、ヒューマンドラマにサスペンスが混ざったような……」
「結構曖昧だね」
「俺はギャングものが良かったぞ! アメリカの田舎町でバーに強盗に入るようなやつ」
「それは潤歩が好きな映画じゃん」

「大雅は?」
 声をかけると、相変わらずの無表情でドーナツをもくもくと食べていた大雅が「別に」と頬を膨らませながら俺を見た。
「何でもいいけど、俺が喋らなくて済みそうな……童話っぽいの想像してた」
「童話?」
「俺、子供の時に学芸会とかで、木の役しかしたことない」
 それはまた偉く美しい木だ。
 大雅の木を想像してほっこりしていると、竜介が横からドーナツの箱に手を伸ばして言った。
「学園ものはVでも撮り慣れてるし、エンタメとしては奇抜な設定ではないから、山野さんが言っていた通り楽な仕事かもしれないな。俺はてっきり教師役かと思ったらまさかの生徒で驚きだ」
 確かに学園ものといえばまさに今日、俺は「放課後即ヌキ部・2」を撮ったばかりだ。先輩と後輩、または先生と生徒で絡む、AVではよくある設定。ちなみに即ヌキ部の1には大雅も出ている。

 しかしいくらありがちな設定と言っても、俺だけ女装というのはどうしてなんだろう。
 確かに俺は他の四人と比べると全然男前じゃない。五人での写真撮影でも、俺だけヒョコッと背が低くて悪目立ちしているくらいなのだ。同じカッコいい衣装を着ていても俺だけファンの人達から「チビちゃん」とコメントが来る。悪意がないのは分かっているけど、やっぱり男として生まれたからには可愛いよりもカッコいいに憧れるのは当然のことだ。

「いっそバラエティ寄りの方がやりやすかったかもしれません……真面目なストーリーでも俺だけ女装なんて、滑稽なだけですもん」
「そんなことないよ、亜利馬。だって亜利馬はほら、……やられ役ってポジションだし。そういう需要があるじゃん! 不良に捕まって拷問されたりとかさ」
「……全然フォローになってないです、獅琉さん」

 五か月前のデビュー時から今も、俺には「末っ子のやられ役」というイメージが付いてしまっている。というのもセックスやエロいことに耐性がないにもかかわらず、散々「凌辱作品」を撮られたからだ。最近はましになってきたとはいえ恥ずかしさのピークを越えると目を回して鼻血も出てしまうし、メンバー含め相手役がベテラン過ぎていつも翻弄されてしまう。

 それに加え月に二回の動画で遊びのスポーツを撮っている時も、どんくさい姿が露呈してどうしても「カッコいい路線」のモデルになれない。更にはファンの人達にも「亜利馬はお笑い要員」「安定のやられ役」というイメージが定着してしまって、サイトにもよく「もっと亜利馬を辱めて!」的なコメントが届く。

 本当はビシッと決まるような男前のモデルになりたい。可愛いよりはカッコいい、ドエロいよりはセクシーでありたい。……ありたいけれど、今の俺がその路線を目指しても需要はない。それが現実だ。