亜利馬、職業AVモデル -2-

 これまでのAVでもドラマ仕立ての物は幾つか撮ってきた。新婚夫婦──勿論お互い男だが──とか、学園ラブコメとか、家族愛をテーマにしたものとか。
 それでもAVのメインはセックスだから、ドラマ部分はそれほど気合を入れている訳ではなくほんのスパイスくらいの扱いだった。俺の棒読み演技でもまかり通ってしまう程度のドラマだ。
 だけど今回はドラマメインの撮影。俺がやりたかったセックス以外での「演技」。AVモデルではなくちょっとした俳優気分に浸れるかもしれない、念願のドラマ撮影。これを逃すなんてとんでもない。

「うっわぁ、楽しみ! 二階堂さん、ありがとうございます!」
「……ああ」
 俺のテンションに驚きを隠せない二階堂さんが、腕時計に視線を落としてから言った。
「詳しい話は山野から聞いてくれ。この後会社に戻って、お前のジャケット撮影が終わったら少し時間をもらうといい」
 山野さんというのは俺の──「俺達」の、マネージャーだ。
「あの二階堂さん、今回の話って、もちろん俺達全員での……?」
「言っただろう。『ブレイズ』の五人全員が出演するドラマだ」
「やった!」

 ブレイズ。それは俺が契約しているこのゲイ向けAVメーカー「インヘル株式会社」が今一番推している、俺を含むAVモデル五人組のグループだ。AVの他にもアダルト動画サイトで専門チャンネル「@ブレイズ」を開設していて、エロとは関係ないバラエティ動画やドッキリ企画などを公開している。
 新入である俺以外の四人は元々単体で人気のあったモデル達だから、彼らが一つのグループになって人気が出ない訳がない。そこにどういう訳か俺も入れてもらって、今は何とか四人の足を引っ張らないように奮闘しているところである。

 少し前にAV女優さんだけで結成された人気バラドルグループがあって、そこからヒントを得たらしいと山野さんは言っていた。今の時代、ゲイAVを見るのは同性愛者の人達だけではない。人気のAVモデルには、そのルックスと本番での色っぽさゆえに女性ファンだって大勢いるのだ。

 AV女優やモデルも人気があればアイドル売りをするという、一般的に見れば変な時代。だけど同時にAVに対するマイナスイメージが少しずつ払拭されてきているのも事実で、本当にしっかりした会社しか生き残れない時代にもなってきている。人を騙して違法な撮影をするような会社は時代と共に淘汰されて行くのだ。

 そういう訳で俺は、男女問わずAVを職業にしている人達がメディアに出て行くのは良いことだと思っていた。
 俺の職業はAVモデル。男同士で裸になって、セックスを見せる仕事。自分から誰かに言うことはないし言う必要もないと思っているけれど、俺は少しの後ろめたさも持たずに楽しんでこの仕事をやっている。