プロローグ

 少し甘めのヨーグルトが大好きで、子供の頃は毎朝食べていたなと思い出す。スプーンが上手く使えずにこぼしたりして、テーブルや服が汚れてしまって、それでも食べたい気持ちの方が大きくて、口の周りをヨーグルトで真っ白にして──毎回母ちゃんに言っていた。
「もういっこ、おかわり!」

 ───。

 中学に上がってから朝飯にヨーグルトなんて食べなくなったから、高校を出て十八歳を少し過ぎた今、俺は思い出の「牛印ヨーグルト」と再会できたことに感動していた。あの頃と同じ少し甘めのさっぱりした味。真っ白でとろける最高の食感。
 俺の幼い思い出。母ちゃんとの朝ごはんの時間──

「やっぱ使うならこのヨーグルトだな。色味も垂れ具合も一番精液に近い」
「………」
 俺の思い出……。
 子供達の骨を育ててお腹の調子も良くしてくれる、大好きな牛印ヨーグルト。
「はい、垂らすから仰向けになってね。冷たいけど我慢して、動かないでね」
「口に含んで、ちょっと唇半開きで。少し口から垂れるように」
「いいね、完璧。もう少し口から垂らせるかな。──うん、そんな感じ」
「じゃ、カメラ回します!」
 今は撮影用の疑似精液と化した、子供の頃の思い出……。

「はい、オッケーです!」
 汗と体液で濡れ光る俺の顔をアップにしていた撮影用大型カメラ──ENGが、その声を合図にスッと引いて行く。そうして静まり返っていた現場に活気が戻り、濡れた俺の顔がタオルで拭われる。
亜利馬ありまくん、お疲れ様です! 残ったヨーグルト食べる? 封開けてないのもあるよ」
 ん、と口の中のヨーグルトを飲み込んだ俺は、撮影アシスタントさんから手渡されたそれを一気にスプーンでかきこんだ。

「もう一個、おかわりください!」