みんな、ずっと仲良し!

 終わったら、そのままファンイベントとかあるといいなぁ。
 そんな風に思っていた時代が、俺にもありました……。
「もう一歩も動けません……腰が……ビクビクして……膝も……」
「亜利馬、大丈夫?」
「情けねえな、あんだけトばしてたくせによ」
 控え室のソファにうつ伏せた俺の尻を、潤歩が引っぱたく。やり返す気力も体力もなく、俺は「うー」と情けない呻き声だけを発してまたソファに顔を伏せた。
「差し入れにアイスもらったよ」
 大雅がスプーンですくったアイスを俺の口元に持ってきてくれた。まだ軽くシャワーを浴びただけで歯も磨いていないけど……甘くて美味しい。

「でも楽しかったね。すっごい興奮した!」
「はっはっは、そうだな。たまにはこういうイベント的な撮影もいいな!」
 はしゃぐ獅琉と竜介。アイスの甘味にほっこり顔の大雅。ボトルの水を飲んで「ぷはあ」と笑っている潤歩。
「あ、もう書き込みされてますよ。凄い大反響です」
 秋常がスマホを見て嬉しそうな声をあげ、怜王もそれを覗いて頷いている。
「ありがとう、ブレイズの獅琉。成功したのはお前達のお陰だ」
 珍しく素直になった夕兎が獅琉と握手を交わし、ぎこちなく笑った。
「ううん、こちらこそ。フリーズの皆のお陰でもあるよ。ていうか、スタッフさん含めて皆のお陰!」
 そうだな、と夕兎が目を細めて笑った。
 ダウンしているのは、俺だけだ。

「よくやってくれた。最高だ、良かったぞ」
「うんうん、編集されたのも楽しみ」
 山野さんと海原さんに褒められ、二階堂さんにも笑顔で頷かれた。少しだけ回復してきた俺はソファに座り直し、そこにいるみんなの顔を見た。
 ブレイズとフリーズのメンバー、マネージャー、監督、カメラマンとアシスタントさん達、雄二さんとヘアメイク担当の後輩達、その他関係者の人達。
 みんな、笑っていた。

「俺達はまだ仕事があるが、お前達はどうする」
 山野さんが獅琉に問いかける。
「送りの車を出すことも出来るが、どっか寄るなら店に送っていくぞ」
「焼肉!」
 潤歩が手を挙げて叫んだ。
「いいね、じゃあ皆で食べに行こうか。フリーズメンバーも」
「お、俺達もいいのか」
「もちろんです、夕兎さん!」
 八人で予約を取ってもらい、俺達はもう一度念入りにシャワーを浴びて顔を洗って歯を磨き、会場を出た。暗くなった空には薄らと星も出ていて、蒸し暑いのに爽やかだ。
「亜利馬、先に車乗ってるよ!」
「はーい、すぐ行きます!」

 炭酸が飲みたくて自販機に寄った俺の背中に知らない声がかかったのは、その時だった。
「あ、亜利馬さん」
「はい?」
 振り返った先にはやはり知らない顔の男の人が立っていた。顔が真っ赤だ。
「あの、……ファンです。握手してくださいっ……」
「えっ、うう、嘘っ!」
 俺の顔も赤くなり、お互いに緊張しながらぎこちなく握手をする。
「サインももらっていいですか」
「ええっ、あ……サイン! 書きますっ!」
 随分前から練習していたものの今初めて求められたサインは、いつかのDVD特典につけた俺のブロマイドに書くこととなった。
「あ、ありがとうございます。これからも応援してます、頑張ってください!」
「こ、こちらこそ、ありがとうございましたっ……!」
 もっと言うべきことがあったのに、俺は何度も頭を下げて手を振り、彼を見送ることしかできなかった。

 ──頑張ってください。

 胸が熱くて、嬉しさに涙が滲む。