亜利馬、覚醒!? -4-

 照明が突然暗くなり、会場がざわつき始める。
「皆様、大変長らくお待たせ致しました」
 暗闇に響く獅琉の声に、瞬間──ざわつき声が一斉に大渦を巻く歓声へと変わった。会場から離れたこの控え室まで地鳴りがしているようだ。物凄いエネルギーが伝わってくる。

「今宵はブレイズとフリーズの融合空間、BurningIceのとろけるような一夜をお楽しみ下さいませ……」
 更に照明が落とされ、画面が完全に真っ暗になった。ファンの誰かが「獅琉ー!」と叫んでいる。獅琉と夕兎以外のメンバーは控え室で衣装に着替え、ゴクリと喉を鳴らして食い入るようにモニターを見つめていた。
 ──いよいよ始まったんだ。

「大雅くん、亜利馬くん。お願いします!」
「え? も、もう……」
 獅琉と夕兎のストリップが見たかったのに、仕方ない。俺は大雅と並んで控え室から廊下に出て、小さく深呼吸をしながらその一歩を踏み出した。

「頑張ろうね、亜利馬」
「……うん!」
 スタッフさんの後を追って関係者専用の扉から舞台裏へ周り、横断幕を通して今まさに獅琉達のそれが行なわれているステージの真裏へスタンバイする。
 ステージは扇形になっていて、最前列の観客は手を伸ばせばモデルに触れられるほどに近い。それほど大きなステージではないけれど、横断幕の向こうから伝わってくる熱気は想像以上だ。爆音でBGMが流れているのに、誰かが鳴らした指笛や何を叫んでいるかまで聴こえてくる。

 ……ドキドキする。きっと、良い意味で。

 BGMが止まって獅琉達が舞台裏に戻ってきた。その顔は汗だくだけど晴れやかで、物凄く楽しそうだ。夕兎も肩で息をしながら笑っている。
「よし。次頼んだぞ、大雅。亜利馬」
 山野さんに肩を叩かれ、俺達は同時に頷いた。
「はい!」

 大雅と俺のテーマは「小悪魔」──と言ったら何だかお遊戯みたいだけど、とにかくそれだ。
 黒いレザーの衣装はデザインが複雑に凝っていて、パンツも丈が短く尻が半分見えている。背中には小さな悪魔の翼があり、頭には赤いツノも生えている。メイクも悪魔っぽく目の周りを黒いアイシャドウで塗り、観客からは見えないけどカラーコンタクトまでしているのだ。俺はともかく大雅はめちゃくちゃ綺麗だった。

「行こ、亜利馬」
 大雅と手を繋ぎ、リハーサルと同じに開かれた横断幕の間を通り、ステージへ進み出る。歓声を間近に浴びる感覚は何だかくすぐったいけど、妙な高揚感があった。

 ステージ中央に用意されていた広い円形の台に乗り、それをベッドに見立てて大雅と絡む──それが俺達の仕事だ。
 黒服のカメラマンが二人、俺達の左右に立つ。カメラの映像は会場の両側にある大きなスクリーンに映し出され、俺達の声も胸元のピンマイクでダイレクトに会場へ響く。
「亜利馬」
「……大雅」
 熱っぽく見つめ合って唇を重ね、貪るように舌を絡め合う二匹の小悪魔。歓声は恥ずかしいよりも気持ち良い。スポットに照らされて大雅と抱き合いながら、俺は円形台の上に体を倒した。

「ん、ぁっ……」
 くねらせた体に大雅の唇が滑り、穴だらけのレザーシャツ(そういうデザインだ)を捲られる。乳首が露出すると歓声がより大きくなった。
「あぁっ……!」
 舌で弾かれた乳首への衝撃に体が跳ね、俺は大雅の頬を優しく撫でた。俺の上にうずくまるようにして体を重ねてきた大雅の尻を片手で揉み、レザーパンツを引っ張って食い込ませる。
「あっ、ん……亜利馬、……」
「大雅、ぁ……可愛い」
 今度は俺が身を起こして大雅を寝かせ、観客に見えるよう大雅の脚を開かせた。ファスナーを指で引っ張り、焦らすようにゆっくりと下げて行く──それに比例し、歓声が大きくなる。
「あんっ……!」
 パンツから飛び出た大雅のペニスを咥えた瞬間、拍手が巻き起こった。大勢の人達がみんな目をぎらつかせて、或いは輝かせて俺達を見ている。

 ──楽しい。こんなに卑猥なことをしているのに、何だか凄く楽しい。
 俺の腰が疼くのは、勃起が収まらないのは、きっと今この瞬間身体中に感じている「快楽」のためだ。