亜利馬、落ちた先はセクハラ大地獄 -7-

 その後はぬいぐるみをお店の袋に入れてもらって、俺達は色々なゲームで遊びまくった。初めてのVRは本当にゲームの中に自分がいるみたいで凄くリアルだったし、シューティングゲームでは意外にも獅琉がハイスコアを叩き出して名前を残すことになった。
 潤歩と竜介が一服している間に俺達もジュースを飲んで、生クリームたっぷりのアイス入りクレープを食べて、また口元のクリームを獅琉に拭われ、大雅にチョコアイスを「あーん」されて、今日一日、心から休日を満喫できた。

「最後に俺達からのプレゼントだよ。亜利馬、誕生日おめでとう!」
「へ? お、俺の誕生日って、十二月ですけど……」
 いいからいいから、とみんなが俺にプレゼントの箱を渡す。両手で抱えた大きな箱にはリボンも巻かれていて、かなりずっしりと重たい。
 そうか。今日は末っ子の誕生日という設定だったから、みんな俺に優しくしてくれた……のかな?

 これまでに買った荷物をトランクに詰めて、我が家──と言っても竜介の家だけど──を目指す。竜介以外はみんな眠ってしまって、相当疲れたのだろう。
「竜介さん、今日はありがとうございました。色々びっくりしたけど、凄く楽しかったです」
「いいんだ、今日は家族サービスの日だからな」
 ハンドルを握って笑う竜介は本当に頼れるお父さんぽくて、カッコ良かった。
「プレゼントの箱、開けてみてもいいですか?」
「ああ、もちろん」
「な、何だろう……!」
 ドキドキしながらリボンをほどき、シールを剥がして箱を開ける。
「………」
「どうだ、気に入ったか?」
「……ええと……」
 箱の中に入っていたのは、手錠。ロープ。バイブ。ローター。オナホール。女物のレースの紐パン……それから、ゲイのエロ本が数冊、DVDが数本。

 この時の俺は気付いていなかったんだ。ただ純粋に、みんなが企画のイメージを沸かせるために「末っ子の俺をちやほやしている」だけだと思っていたんだ。
 だけど山野さんから届いた最終決定事項のメールにはこう書いてあったはずじゃないか。
 ──末っ子亜利馬を嬲り尽くす。
「………」
「気に入ったか? 亜、利、馬」
 ミラー越しに竜介と目が合った。いつものにこやかな表情なのに、その目だけは──夜空に浮かぶ月よりも、ぎらぎらと輝いていた。
 竜介はメンバーのうち誰よりもハードな企画に挑戦していた。俺だって一度現場を見学させてもらったことがある。普段の彼とは真逆の鬼畜な役でもすぐに入り込んで、本来の優しさなんて微塵も感じさせないほどのサディスティックな男を演じていた──
「家に着くのが楽しみだなぁ。……亜利馬?」」
 これは竜介の演技だ。分かっちゃいるけど、怖くて仕方がない。
「あ、あの竜介さん。このプレゼント、まさか使う気じゃ……」
 本当に気付いていなかったんだ。かといって騙されたわけでもない。

「そりゃあそうさ。なんたって今日は──」

 俺のバカ、バカバカバカ!

「今日は、家族サービス・・・・・・の日だもんな!」
「っ……!」
 竜介のデカい車は走り続ける。この先にある確かなセクハラ大地獄へ向かって。
「おっ、降ろしてくださいぃッ……!」
「はっはっは、みんながサービスした分、今夜は亜利馬も頑張らないとな!」
「嫌だぁ──ッ!」

 はっはっは。あっはっは。くすくす。ぎゃはは。
 トランクの中でぬいぐるみの動物たちも笑っている、そんな気がした。