ブレイズ&フリーズ、真夏の大激闘祭 -4-

 程なくして撮影を終え、簡易シャワーで汗を流してから休憩室に戻って来た大雅と竜介、そして怜王。三人とも疲れ切った顔で、なだれ込むようにして畳に尻餅をついている。すぐにアシスタントさんが三人分のガウンと冷たいドリンクを用意し、それぞれに冷えたタオルを手渡した。

「お疲れ様。大丈夫?」
 獅琉が窓辺に寄りかかりながら苦笑している。
「いやあ、流石に疲れたな。俺と怜王は仕事量が半分ずつだったからまだ良いが、大雅は……頑張ったな」
 半着衣状態で肩を剥き出しにさせ、もう一歩も動きたくないという様子で寝そべる大雅。俺は糖分接種用のミルクキャラメルを取り出し、素直に開いた大雅の口に入れてあげた。
「ごめんね亜利馬。……仇打ち、あんまり出来なかった……」
「何言ってんのさ、そんなのいいんだって。ゆっくり休んでよ。お疲れ様」
 ──ん? 『あんまり』?
「………」
 思わず怜王に視線を向けると、彼はぼんやりと宙を見つめながら体育座りをしていた。
「……怜王さん、どうしたんですか」
 訊けば、竜介がそっと俺に耳打ちした。
「終わってから大雅に言われたんだ。『あんまり慣れてないね』って」
「ああ……」
 色々な意味が込められたその一言を、怜王はまともに受け取ってしまったのだろう。無口だけど不真面目ではなさそうだし、初コラボで少なからず緊張もしていただろうし。

 複雑な思いで考えていたら、秋常が俺の方へやって来て目を輝かせながら言った。
「いよいよですよ亜利馬くん。一緒に頑張りましょう。わくわくします」
「は、はい」
 フオォー、と気合の声を発しながら秋常がトイレへ駆けて行く。その後ろ姿を眺める俺の肩を叩いたのは、潤歩だった。
「亜利馬」
「何ですか?」
「あの秋常って奴が、もし本番中にお前に何かしてきたら合図を送れ。撮影に支障が出ない程度で助けてやる」
「合図。……どんな風に」
「目で訴えろ。お前は感情が目に出やすいからすぐ分かる」
 それは恐らく俺の感情の分かりやすさではなく、潤歩の動物的勘がなせる業だ。潤歩の申し出は物凄く心強かったけれど──できれば、そんなことをしないで済むように全てが終わるといい。

 俺達の撮影の流れは、岩陰での3P。初めから三人揃った状態での絡みで、特に決まった台詞やストーリーというものはない。
 今回は終始立ったままで行なう撮影だ。俺としては初めての試みだった。
「亜利馬はそこ、潤歩はここ、秋常はこっちだ」
 二階堂監督自ら立ち位置の調整をしてくれて、俺は緊張しつつも心の中で気合を入れた。なるべく背景の海と岩が綺麗に入るように、カメラワークも俺達の位置にも注意を払わなければならない。今回は照り付ける太陽も、海も、浜も、全てが撮影のためのセットなのだ。
「準備はいいか」
「オッケーです!」
 俺の右に秋常。左に潤歩。早くも暑さと緊張で汗をかいてしまっているが、大丈夫。この緊張の中に存在しているのは、不安だけじゃない。

「スタート!」
 合図と同時に、潤歩が俺の後頭部に手を添えて唇を合わせてきた。今回は大まかな流れは決まっているものの細かい前戯への決まりはないから、取り敢えず声がかかるまで自分達なりの絡みをすることとなっている。
「ん、……」
 仄かに汗の味がするキス。角度を変えながら俺と舌を絡ませ合う潤歩が、ジト目でこちらを見ている秋常と視線を合わせ、勝ち誇ったように笑ったのが分かる。ざまあ、みたいな笑みだ。──全く、負けず嫌いな先輩だ。
「んぁっ、……」
 秋常の舌が俺の右耳に触れ、そのまま中へと侵入してきた。そうしながら汗をかいた胸元に指先を這わせ、敏感な俺の反応を楽しむような仕草でくすぐられる。
「……亜利馬、舌」
「は、ぁっ……」
 口を開けて舌を出すと、潤歩がそこにかぶり付いてきた。痛くはないけどその勢いに驚いてしまい、一瞬だけ体が強張る。潤歩の口の中で俺の舌が吸われ、しゃぶられる感覚は、何だかフェラチオと似ていた。まるで口の中で疑似セックスをしているような気持ちになる。
 ──やっぱり、潤歩は凄い。