ブレイズ&フリーズ、真夏の大激闘祭 -2-

「フリーズの皆さん、到着しました!」
 浜辺から上の道路を見上げると、ちょうどワゴンから出てきた夕兎と目が合った。彼もさすがに今日という日に緊張しているらしく、その顔の強張りは演技じゃないと一目で分かる。
「亜利馬くん!」
 ガードレールから身を乗り出して、こちらに手を振っているのは秋常だ。その後ろには腕組みをして眩しさに顔を顰める怜王もいる。
「秋常さん」
 礼儀として手を振り返すと、
「亜利馬、亜利馬」
 潤歩に肩をつつかれ、耳打ちされた。
「見ろよあいつの格好、変質者じゃねえか」
 恐らくは日焼け防止で着ているであろう、少し長めのパーカー。そして中は競泳用パンツタイプの水着。言われなければ気にしなかったけれど、突然潤歩に耳打ちされて俺はつい噴き出してしまった。
「そ、そういうこと言ったら駄目です……!」
「コラ、そこの紫頭! 亜利馬くんに引っ付いてんじゃねえ!」
 聞こえないフリをして、潤歩が俺の肩を抱く。
「てめぇ、ぶっ殺すぞ!」
「亜利馬、獅琉んとこ行ってジュースもらおうぜ!」
「……潤歩さん……」
 今のところ、不安しかない。

「遅れてすまなかった。今日はよろしく頼む」
 浜辺に降りてきた夕兎が、獅琉と握手を交わして言った。
「いいよ、待ち時間も楽しんでたし。夕兎くん、海似合うね。肌灼けてるからかな?」
「……う、うるさいっ。気安く触れるなっ」
「相変わらずキャラはブレてるなぁ……」
 そのすぐ傍では、竜介の後ろに隠れた大雅が怜王に小さく会釈していた。
「人見知りするタイプでな。慣れれば喋るようになる」
「……別に。喋る必要もないだろう」
「あんたも人見知りか?」

 そして俺達の方へやって来た秋常が潤歩を無視して俺の手を取り、甲に唇を押し付けて言った。
「今日この日のために俺は生まれてきたんです。亜利馬くん、撮影といえど君を抱くことが出来ることを心から光栄に思いますよ」
「そ、そうなんですか」
「はあぁぁ、亜利馬くんの水着姿……犯罪的なエロさ」
 あの日倉庫で俺に何をしたかなんて完全に忘れているのか、秋常は頬を赤くさせて照れたように視線を泳がせている。俺に惚れてくれているというのは素直に嬉しいけれど、我が道を行き過ぎている彼の行動には不安が募るばかりだ。
「何だお前。危ない薬でもキメてんのか」
「黙れ不良。貴様のような者が俺に対等な口を利いてくれるな」
「亜利馬、終わったらアイス食いに行こうぜ。二人でよ」
「貴様ァッ!」
「あ、煽らないで、潤歩さん!」

 それから俺達は両グループに分かれて、それぞれのマネージャーから撮影の流れを改めて説明された。
 初めは竜介と大雅。パラソルの下でビーチチェアに寝ている大雅を、竜介と怜王がイタズラするところから始まるという設定だ。
 次に俺と潤歩。お忍び的な雰囲気で、「岩陰で潤歩と秋常に翻弄される俺」を撮る。
 最後に獅琉と夕兎。波打ち際での絡みから砂浜での本番となる予定で、陽が沈み始めたのと同時に撮影スタートだ。流石に日中の砂浜でシートも無しに寝転がるのは酷だし、日差しに弱い獅琉の肌を考えてのことでもある。それに、夕日をバックに絡み合うなんてかなりロマンチックな映像になりそうだ。

 フリーズの三人にも同じ説明がされ、十時きっかりに竜介達の撮影が始まった。
 その間、俺達はエアコンの効いた休憩所で待機だ。シャワーで砂を落としてから畳敷きの部屋へ上がり、ぬるいお茶を出してもらう。暑くて堪らないけど、撮影前に冷たい物を飲み過ぎるのは絶対的にNGなのだ。……ウケ役は特に。

「お、始まったぞ」
 休憩所の窓から撮影風景が見える。若干離れているから全貌は見られないけど、俺と潤歩と獅琉は小さな窓に張り付いて、食い入るようにそれを見つめた。
「わあ、何か野外ってだけでエロさが増すね」
「詰めろ、獅琉。――お、パンツに手突っ込んでる。これで起きねえわけねえだろ」
「いや、大雅なら有り得るね」
「お、俺にも見せてください……」
「だめだめ、亜利馬にはまだ早いよ。これはもうR-20だね」
「ず、ずるいです獅琉さんっ」
「かぁ、エロ。……亜利馬お前、大雅の声アテレコしろ。そしたら見せてやる」
「あっ、あん……やめて、竜介……、あんっ」
「棒読み。不合格」
「………」

「全く……品のない奴らめ」
「そうかな。亜利馬くんは下品でも可愛いけどね」
 テーブルの前に座った夕兎と秋常が、窓に張り付く俺達をそれぞれ違う目線で眺めている。
「夕兎さんもこっち来て見ますか? 俺と同じチビ組だから、そこからじゃよく見えないでしょ」
「だっ、誰がチビだ!」