第16話 ヒミツのブラザーフッド

 頼寿の胸に顔を埋め、頼寿の膝に股間を擦り付けること約五分。俺は小さく息を漏らしながら、何とかこの状況を脱してやろうと頭を働かせていた。
 ちらりと視線を向ければ、頼寿は余裕の笑みで俺を見ていた。それは俺が我慢できなくなって「お願い」するのを待っている顔──そしてそうなることを確信している顔だった。

 ダメだって。人んちでこんなことしたらダメなんだって、流石の俺もそれくらい分かっている。

「ん、やぁ……膝、動かすなっ……」
「動いてんのはお前の腰だろ」

 ダメとか言いつつ俺のそこは既に硬くなっていた。もちろん頼寿にもそれは伝わっているはずだ。

 それなのに。

「タマ、やめて欲しいなら手は出さねえから安心しろ」
「あ、脚は出してるくせに……」
「不満そうだな」

 この余裕の顔に腹が立つ。俺はシーツを汚さずに済む最善策として、口を尖らせながら頼寿に言った。

「じゃあ、俺がイくまでそのままじっとしてろよ。イく時は家から持ってきたタオルに出すし」
「人の膝でオナニーするってことか」
「最低だ……頼政さんの家なのに。何で性欲我慢できないんだ、俺のバカ!」
「まあ、俺がそうなるように躾けたからな」

 しれっと言ってのける頼寿を思い切り睨み付けると、頼寿が俺を抱きしめたまま体を仰向けにさせた。必然的に頼寿の上に乗る恰好になり、先日のサルベージでの騎乗位を思い出してしまった。

「な、なんだよこの体勢」
「コッチの方がやりやすいだろ。イッても俺の体にかかるだけだしよ」

 ほれ、と頼寿が俺の下で大の字になる。

「好きな箇所でコイていいぞ。お勧めは腹筋だな。硬さには自信がある」
「………」

 これって結局、俺がめちゃくちゃ恥ずかしい思いをするやつじゃないか。

「兄貴に気を使ってるなら無意味な心配だぞ」
「え? どういうこと」

 訊ねると、頼寿が片手でベッド脇の棚の上を指した。そこには洒落た形の除湿機があって、時計があって、何やら色々と入っているバスケットがあって……

「弟に使わせる部屋にわざわざローションとコンドームを置いておくような奴だからな」
「な、何か色々入ってるとは思ったけど……頼政さん……」

 もはや過保護の域をはみ出しまくっている頼政さんの心遣い。頼寿はこんなにも性悪なのに、兄弟でどうしてここまで違うのだろう。
 ……というか性格が良くても悪くても、「ちょうど良い」感じにならないところがこの兄弟らしい気もする。足して2で割ればバランスの取れたノーマルなイケメンが誕生しそうだ。

「で、タマちゃんの不安は解消してやったわけだが。それでもまだオナニーで済ませるか?」
「も、もういいよ……抱いてよじゃあ」
「投げやりなフリして安心してんじゃねえぞ」

 からかうように言って、頼寿が手を伸ばし俺のシャツを脱がせた。
「もういい」と言ったのは、この兄弟に常識を求めることを諦めたからだ。上手に付き合うなら俺もどこかで同レベルにぶっ飛んでいないと、この先ずっと振り回されそうな気がする。

「って、頼寿も半勃ちじゃんか……」
「不能よりはいいだろ」
 まあ確かに、と開き直って俺は一気に頼寿のスエットパンツをずり下ろした。
「なあ、……合わせて擦ってもいい?」
「好きにしろよ。お前の性癖が一つずつ明らかになっていくのを俺はここから見ててやる」
「………」

 ──分かってる。いちいち考えてたらおかしくなるんだってば!