第15話 プール合宿開始!

 今年は記録的な暑さになるでしょうと、毎年言っているような気がする。記録に残るかどうかは分からなくても、暑くて外に出たくないという気持ちはまあまあ分からないでもない。

「アイスとカフェオレ買ってきましたよ、坊ちゃん」
「ありがとう快晴! 快晴も好きなの食っていいからな!」

 エアコンの効いた部屋で朝からゴロゴロ、毎日が夏休みのような最高の気分ではあるけれど……特に何処へ行くでもない夏休みだから、退屈といえば退屈である。

「快晴、外から帰ってきたのにあんまり汗かいてないな」
「ええ、僕は暑さは得意なんですよ。南方出身なので、東京の夏は丁度いいくらいです」
「だから名前も快晴なんだ!」

 二人でアイスを食べながら談笑していると、キッチンカウンターに寄りかかって昼飯代わりのトマトを丸かじりしていた頼寿が「安直」と呟いた。

「頼寿さんも汗かかれませんね、そういえば」
「快晴聞いてない? こないだサルベージで泥酔してステージ上がってさ、次の日撮影した映像見せられた時は汗だくだったんだよ」
「何ですかそのV、僕にもください!」

 目を輝かせる快晴に、頼寿が舌打ちする。思い出せば俺も赤くなるけれど、頼寿にも「恥ずかしい」なんて気持ちがあるのかと思うと少し意外だった。

「そういやタマは、夏は旦那と旅行しねえのか」
「どうだろ。会長が休み取れれば行くかもしれないけど……夏は海よりプール派だな、俺は!」

 海は生き物がいるから怖くて入れない。テレビで見るのは好きだけど、実際目の前にサメが来たら食われるより先にショック死確実だ。

「プールって言えばさ、今度の仕事でプールのステージやるって話はどうなったの?」

 俺が訊くと、頼寿が三個目のトマトを齧りながらそっぽを向いた。何だかその話題に触れられたくなかった、とでも言うように。

「坊ちゃん、ステージの前に水中で浮く訓練をしないとですよね? 明日から訓練合宿が始まるって、スケジュールに組んであったと思いますが」
「えっ? そんなの知らねえけどっ?」
「あれ。頼寿さん言ってなかったんですか?」

 聞いてない。思わず頼寿に顔を向けると、やはり頼寿はそっぽを向いていた。

「どういうことだよ? なんで教えてくれないんだよ」
「………」
「何だコイツ黙って」

 思わずムッとなってしまう。
 すると快晴が自分のスマホを開いて、わざわざ俺達のスケジュールを教えてくれた。

「えっと明日から五日間、プール付きのお庭がある郊外の一軒家で合宿ですって」
「プール付きの一軒家っ? もしかして会長がそのためだけに用意してくれたのっ?」
「違げえよ」

 頼寿がそこだけ吐き捨てるように言って、不機嫌そうに煙草を咥える。何が何だか分からず、俺は快晴に話の先を促した。

「えっと……合宿としてお借りするお家は、──うわっ!」
「な、何? どうしたの快晴、何びっくりしてんのっ?」
「………」

 快晴がスマホを閉じ、頼寿の方を見て「お察し」といった様子で頷く。

「何だよ? もしかして廃墟とか? いわく付きの怖い家とか?」
「いえ、坊ちゃん。その……」

 快晴の言葉に続けて、頼寿が紫煙を吐きながら言った。

「合宿先は、俺の兄貴の家だ」

 ──え?