第14話 サルベージの一夜 -3-

 頼寿に着せる予定の王子様の服は、童話に出てくる青年王子そのものの衣装──というか派手なデザインの軍服だった。

「昔の軍服はこんな感じで、王族なんかは特に好きなようにオーダーメイドで軍服を作っていたんだよ。まさに衣装だね」
 ローゼオさんの説明になるほどとつい頷いてしまう。赤を基調としたデザインで黄金の肩章も付いているし、白いパンツにブーツまで。頼寿に似合わなそうだけど、まあ、たまにはということで。

「ありがとうございます! ローゼオさんデザインの素敵な衣装着て、頑張りますよ!」
「ああ、俺も嬉しいよ! 頑張ってくれ玉雪くん!」

 そんなわけで俺は洒落た学生服を身にまとい、浮かれ気分でキッチンへと向かった。

「頼寿、衣装決まったよ!」
「おう、そうかよ。そりゃあ……結構だな」
 頼寿はキッチンのテーブルに行儀悪く腰掛け、珍しくだらだらとしていた。何となく顔は赤く、何がおかしいのか少し口元も緩んでいる。

「もしかして酔ってるのか、頼寿」
「頼寿さん、さっきからテキーラ飲みっぱなしなんですよ……」
 俺の問いかけに答えたのは、キッチンでビールサーバーのチェックをしていたスタッフの原さんだった。

「ええっ、本当に? ごめんなさい、お店の酒をっ……」
「いえ、店長に言われてるのでいくら飲んでも構わないのですが……ステージの時間までに酔い冷めますかね?」
「ああもう……何やってんだ頼寿っ」
 いつもはどれだけ飲んでも滅多に酔わないのに、一体どうしたというのだろう。頼寿が腰掛けたテーブルには空のショットグラスが幾つもあって、開店前から洗い物の仕事を増やしてしまっている。

「もう酒は飲むなって。水飲んで、時間までソファで休んでろよ」
「うるせえ。タマちゃんも隣座れよ、裸でな」
「めっちゃ酔っ払いじゃんか。……すいません原さん、こっちで引き取りますので」
「ありがとうね。後でジュース持ってくよ」

 頼寿の腕を引っ張ってキッチンからフロアへ出し、ゼェハァいいながらようやくボックス席のソファにその体を横たわらせる。
「悪いな、タマ」
「どうしたんだよ? 仕事前に酔っ払うなんて頼寿らしくないじゃんか。ロッソ君の店だから?」

 頼寿が目を細めて俺を見上げている。微笑んでいるのだろうけど、それすらも頼寿らしくない。

 そして、少しの沈黙の後で頼寿が口を開いた。

「自分の男とステージ立つなんて経験がねえんだよ」
「え?」
「俺達のセックスを大勢に見せつけてやれると思ったら、勃起が収まらなくてな」
「……はぁ?」
「酒飲むと多少落ち着く体質なモンで、少し飲むはずが……お前をどう攻めるか色々考えてたら変な酔い方をしたらしい」

 ……これは何なんだ。喜ぶべきか呆れるべきか。

 俺は溜息をついて、寝ている頼寿の足元側に軽く腰掛けた。

「頼寿も緊張することってあるんだな。意外だけど、そんな状態でいいのか?」
「何言ってやがる」
 反動をつけて起き上がった頼寿が、いつもの不敵な笑みで(若干赤いが)俺を見つめて言う。

「逆にやる気が湧いてきたぜ。覚悟しておけよタマ」
「そ、それならいいけど……」
「で、衣装が決まったとか言ってたな」
「そうなんだけど、うーん……」

 酔っ払いの王子様なんて絵的に大丈夫だろうか。……いや、好色王子と言っていたから、逆にアリなのかもしれない。

「頼寿は今日は王子様だよ!」
「何だそりゃ」