第13話 先輩たちの助言! -4-

「………」
 俺は目を泳がせながら一口ソーダを飲み、小さく息をついて二人に言った。

「……あの、頼寿が好きなプレイって、やっぱりSM系のハードなやつなの?」
「好きっていうか、それが頼寿にとっての『普通』なんじゃない? 仕事にしてるぐらいだし」
 ロッソ君がチョコチップクッキーを齧りながら当然のようにそう言って、俺は「やっぱり」と項垂れた。

 俺もいずれはロッソ君や快晴がしたようなハードプレイができるようにならなければならないのかもしれない。……仕事でやってるショーなんかよりもずっと本格的なSMプレイを。

 頼寿がそれをしたいと言うなら俺だって応えたい。二人に聞いておいて良かった。

「そ、そしたら俺も──」
「焦らなくていいんですよ、坊ちゃん」
 快晴が苦笑しながら首を振る。

「恋愛において物事を相手に合わせるのは素晴らしいことですが……坊ちゃんはまだまだ初心者ですし、元々マゾだったわけでもありません。それは頼寿さんも理解してますから、頼寿さんに委ねた方がいいですよ」
「そ、そうかな」
「ゆっくり進めればいいんです。焦っても何も良いことはありませんから」

 縮こまって唇を噛んだ俺の頭に、ロッソ君の手がポフと乗っかった。そのままめちゃくちゃに撫で回され、髪が爆発状態になってしまう。

「ちょ、ちょっとロッソ君……!」
「玉くん、可愛いなぁ! 初めて会った時とは比べ物にならないぐらい頼寿のこと好きになっちゃってんじゃん!」
「別にそんな好きじゃねえし! 何言ってんの!」
「そんな健気な玉くんに、お兄さんから耳寄りな情報だよ」
「ん?」

 ロッソ君のニヤニヤ顔に若干嫌な予感がしたが、耳寄りな情報──とても気になる。
 そんな俺の剥き出しの好奇心が伝わったのか、ロッソ君が人差し指を振って言った。

「頼寿はね。可愛いよりもセクシー系なのが好きなんだよ」
「セクシー?」
「うん。甘えるよりも誘う感じのやつ。恥じらうよりも求めちゃう感じのね」
「ロッソさん、いいんですかそんなこと言って……」

 不安そうな視線を送る快晴だが、ロッソ君はあっけらかんとした顔で続けた。

「だって事実じゃん。普段攻める男ってのは、割と恋人から攻められるのが好きっていうデータもあるし」
「それって『サルベージ調べ』でしょ……」

 可愛いよりもセクシー。正直どっちも俺には無いものだけど、どうせ両方無いなら頼寿が好む方を身につけた方が良いに決まってる。

「じゃあ、自分から誘って攻めるのがいいってこと……?」
「そうだよ。それも上品にね。淫乱とセクシーは違うからね」
「どど、どう違うのっ?」
 思わずデカい声が出てしまった。
「言葉で説明するのは難しいけど……淫乱てのは自分のセックスのことしか考えられない状態で、セクシーは二人でセックスを楽しみたい状態……かなぁ」

 ロッソ君の言葉を、頭の中のメモ帳に光速で書き記してゆく。隣では呆れ顔の快晴が「一概には言えませんよ」と言いながら緑茶を飲んでいた。

 セクシーに上品に攻める。
 それをしたら、頼寿は喜んでくれるだろうか?