ブレイズ、そこにいる5人 -7-

「亜利馬っ、それは俺の肉だ! 勝手に食ってんじゃねえ!」
「焼肉は戦いなんですよ、潤歩さん。ボサッとしてたら背中を刺されます」
「こっからこっち全部俺の肉! 俺様の陣地に入ってくんな、お前ら!」
「もう、飯くらい落ち着いて食べなよ。子供じゃないんだしさぁ」
「大雅、何か追加で頼むか?」
「……白いご飯と、ネギ塩タンと、コーラ」
「了解。お前達は何かあるか」
「竜介、俺のビールも!」
「特上ロース!」
「俺もコーラお願いします!」
 焼肉屋の個室で男五人。食べて飲んで騒ぐ様はそれこそ子供みたいで、そんな時間が俺にとっては心から楽しかったりする。俺が「亜利馬」でいる時間。衣装を脱いで台本通りの台詞を言うこともない、正真正銘の「亜利馬」でいられる時間。
 そんな大切なひと時を、この四人と一緒に過ごせることが嬉しかった。

「八月の動画でさ、みんなで海行ったりできるといいね」
「獅琉さん、日焼けしちゃいませんか?」
「毎年のことだもん、平気だよ」
「俺はボード持ってこうっと。お前らガキ組は浮き輪だな」
「別にいいじゃないですか、浮き輪楽しいですよ」
「竜介に二人分、引っ張ってもらう」
「はっはっは、任せろ!」

 こんな風にずっと楽しくやっていけたら。
 思ったその時、着信を受けた獅琉のスマホがテーブルの上で振動した。
「もしもし。……はい、今五人います。──えっ? あ、本当ですか……はい。わ、分かりました」
 通話を切った獅琉が神妙な面持ちで俺達四人の顔を見て、……ニヤリと笑った。
「俺達のライバルグループの結成が正式に決まったって。今後は動画でグループ対決とかあるかもしれないって」
「えっ?」
「マジか」
 ブレイズのライバル。本気で挑んでくるとしたら、それはきっとメーカー側も相当に自信のあるモデルを揃えるつもりだ。
「面白いじゃねえか。誰が来ようと血祭りにあげてやる」
「へ、平和なゲーム対決ならいいですけど……。売上げとかを本気で争うとしたら、ちょっと怖いですね……」
「構わないさ。楽しければ何でもいいじゃないか!」
「……俺もどっちでもいい」
「よし、俺達も改めて気合入れてこう!」
 獅琉が拳を前に突き出し、俺もそれに続いた。竜介が大雅の腕を取って同じように突き出し、最後に潤歩が嫌そうに拳を作った。
「えーと、こういう時の掛け声は……」
「ファイトー! みたいな感じですか?」
「よし。ブレイズ──……」
「長げぇよ」
「ファイ、トー、……?」
「ファイト~」
 全く噛み合わないタイミングのぐだぐだ感と照れ臭さに、俺達は大笑いしながら焼肉争奪戦を再開させた。

 見たことがないもの、やったことがないもの、感じたことのないもの。
 まだまだ知らないことが多過ぎて、これから先の道、不安は決してゼロじゃない。時には挫折したり泣いたり、悔しい思いもするかもしれない。着地点も定まっていない俺だけど──いつか見えた目指す場所が遠くても険しくても、その道を五人で走れるならきっと何だって乗り越えられる。

 あの日踏み出した一歩を、いつか誇れる日がくるように。
 俺もブレイズも、前だけを見て進み続けるんだ。