第7話 頼寿と会長と怒涛の夜 -6-

「うわっ、あ……! や、やめ……!」
 頼寿の腕が更に大きく俺の脚を開かせる。
「あっ、んん……! 会長、も、やめてくださっ……あぁっ! やっ、吸わな、ぃで……!」
「あー、腕疲れる……」
 背後では頼寿が文句を言っている。もちろん、俺にしか聞こえない声で。

「ふあぁっ……! そんな、吸ったら……もう無理っ、イく……!」
「タマ、……」
 もはや面倒臭そうな口調で、頼寿が次の「台詞」を囁く。俺は何かを考える余裕もなく、頼寿に指示されるまま会長の髪を緩く掴んでそれを言った。
「飲むんじゃねえ、……が、顔面で受け止めろっ!」
「はぁっ、は……玉雪っ……」
「ひっ、あぁぁっ──!」
 そうして絶妙なタイミングで、俺は三上会長の整った顔に自分の精液をぶっかけることとなったのだった。

「はあぁ……」
 体中の力が抜けていく。頼寿がそっと俺をソファの上──会長の膝の上に降ろし、長時間俺を持ち上げてだるくなったらしい腕を軽く振りながら言った。
「すいません。今日のうちにフェラまでいくと思わなかったんで、言葉使いはちゃんと教え込んでいませんでした」
「いや、いいさ。初めは玉雪のナマの反応も見たかったしな」
「相変わらずっすね、会長」
「お前の言葉選びも相変わらずだ」

 二人が何を話しているのか、ぼんやりして考えられない。とにかく疲れて眠くて、水が飲みたくて、……俺は会長の膝に頭を乗せたまま太い息を吐き出した。

「お疲れ様、玉雪。なかなか良い射精ぶりだったよ」
「……どうも……」
 頼寿が差し出した箱からティッシュを数枚抜いて、会長が顔に付いた俺の精液を拭いている。

 それから会長がシャワーを浴び、さっぱりした顔で「それじゃあ、また来るよ」とリビングを出て行こうとした。
「え、かいちょ……帰っちゃうんですか」
「すぐにまた来るよ、玉雪。今度はお前のデビューステージについて話し合おう。衣装も可愛いものをたくさん用意するからな」
「あ……う」
 ──一体、何の時間だったんだ。

「タマ、いつまでもケツ出してねえでお前もシャワー浴びて来い。着替えて寝ろ」
「て、ていうか……」
 俺はソファから体を上げ、慌ててパンツを直しながら頼寿に詰め寄った。
「ていうか、何なんだよこれっ! 何で俺、会長にあんなことされたのっ? しかもこれだけ? このためだけに今日、わざわざ会長がここに寄ったのかっ?」
「……何だ、最後までヤられたかったのか」
「そ、そういう訳じゃない!」

 ぼさぼさになった俺の髪に触れた頼寿が、毛先を指先でくるくる弄びながら鼻で嗤った。

「大体分かっただろ。三上の旦那は超絶ドM野郎なんだよ。それもお前みてえなガキに罵られたり強制されたりするのが好きなんだと」
「へ、え……? だって俺、頼寿と組んでSMごっこするんだろ。俺、Mの役なんじゃないの?何で俺が会長に対してSにならなきゃいけないわけ……?」
「最強のMっていうのは、同時に最強のSにもなれる素質がある。ステージではもちろん俺がトップだが、旦那の前では旦那好みのトップになってやれよ、玉雪」
「………」

 ──何これ、夢?

「玉雪……?」
 ふらふらと揺れる体。膝がガクンと曲がって倒れそうになった時、頼寿が俺を受け止めて支えてくれた。
「シャワーは朝でいいから、もう休め」
「お、俺……そんなよく分からないのなんか、なりたくない……。ていうか、こんな仕事したくない……」
 切れ切れに訴える俺の目を覗き込みながら、頼寿がふっと笑う。

 そうして、俺の頭に手を置いて悪魔のような低い声で囁いた。

「観念しろ。お前の人生は既に始まってる」