第7話 頼寿と会長と怒涛の夜

「それでは坊ちゃん、良い週末をお過ごし下さい!」
「あ、ありがとう快晴……この一週間ごはん凄く美味しかった。アメもありがとう、元気で……!」

 何だかんだで快晴には良くしてもらった。会長に会えるのは嬉しいけれど、今日で快晴とはお別れと思うと涙が溢れそうになる。
 が──

「あはは。そんな鼻水垂らされると言いづらいんですが、これからも全然来るのでお気になさらず……」
「え、そ、そうなの?」
「はい、頼寿さんが坊ちゃんに集中できるようにと。今日のところは三上会長がいらっしゃるということで、僕は週末をご主人様と過ごします」

 俺は聞いていいものか少し迷ってから、快晴にその質問を投げかけた。

「快晴、ご主人様いるなら……ウチで住み込みで働くの、嫌なんじゃない? ご主人様と一緒にいた方が……」
 すると快晴が小さく笑って、その綺麗な長い指で俺の頬に軽く触れた。いい匂い──甘くて爽やかで蕩けそう。

「お気遣いありがとう、坊ちゃん。でも僕の今のご主人様は少し甘ったれでね。僕に依存しまくりだからたまには僕がお仕置きしてやろうと思って、放置プレイの一環なんですよ」
「え? えっと……ボトムが、トップにお仕置きなんて、することあるんだ……?」
「ライフイズフリーダムですよ、坊ちゃん。多くのものに『絶対』はありません。それに僕はこう見えて頼寿さんの助手ですからね、トップとしての顔も持ってるんです」
 はあ。思わず溜息が出た。この世界、まだまだ俺の知らないことばかりだ。

「わ、分かった。じゃあ快晴も週末はゆっくり楽しんで。今度ご主人様にも会わせてよ」
「はい、ぜひ!」

 玄関で互いをハグし合う俺と快晴。横では頼寿が呆れたように──何なら若干ひいている感じでそんな俺達を見つめていた。

「どうせ月曜にはまた会うんだからよ。さっさと行けよ快晴、コッチは忙しいんだ」
「はう、頼寿さん……月曜日にはぜひ今夜の話を聞かせて下さいね!」
「分かったから」
 それじゃ、と快晴が来た時と同じく手ぶらで玄関を出て行った。

 ドアが閉まって、しばしの沈黙に包まれる。

「………」
 駄目だ。頼寿と二人きりは気まずい。昨日の夜あんなことになってしまったから、頼寿の顔を見るのが恥ずかしい。

「玉雪、俺は今夜の食事を作る。旦那が来るまで適当に過ごしてろ」
 頼寿の横顔。素っ気ない低い声。
「う、うん」

 生まれて初めての経験だった。
 俺はこの男のアレを、自ら進んで咥えたんだ──

「旦那は何が好物だったか」
「……い、一番はロールキャベツで。後はローストチキンと……」
「お前は」
「おお、お、俺は……ハンバーガーとオムレツ、あとスパゲッティと、ポテトチップ……」
「大忙しになるな。予定変更だ、お前も手伝え」
「もう! 適当に過ごせって言ったのに」
「そういうとこだぞタマちゃん。誰かのために何かをする、大人への第一歩だ」

 何だか上手く扱われているような気がするけれど、この際我慢するしかない。

 今夜は何と言っても、三上会長に会えるのだ。