ブレイズ、そこにいる5人 -2-

 怒るよりも混乱してしまう俺を見て、獅琉が言った。
「いいじゃん、ナース可愛いよ。俺がやりたいくらい」
「じゃ、じゃあ俺は教師の方を」
「駄目だ。決定事項だ」
 山野さんに一蹴され、俺は口を尖らせながらテーブルに身を伏せた。
「こちらとしても、お前に女装をさせたいわけじゃない。たまたま決まったのがそれだったというだけだ。女言葉を使う必要はないし女っぽく振る舞えとも言わない。ただその、二階堂さんが……お前に似合うだろうと、……」
「………」
 ……二階堂さんの言うことなら逆らえない。俺はもちろん、山野さんも。
 女の子が嫌ということじゃなくて、女装が嫌なのだ。高校の文化祭で強引に女装させられて知らない他校生にナンパされまくった俺は、文化祭後の半年間はそれをネタにからかわれ続けてきた。女装が似合うと言われると、褒められているというよりも「チビで小柄のちんちくりん」と言われているような気がしてムッとなってしまうのだ。
 俺だって男なのだから、どうせなら可愛いよりもカッコいい服が着たい。
「………」

「獅琉のナースも似合いそうだけどな。ぱつぱつの尻がエロそうだ」
「でしょ。下着もレースで華奢なの穿いてさぁ」
 山野さんが会議室を出て行って、一旦しばしの休憩となったが。
 竜介と獅琉が盛り上がる横で俺は今もなお潤歩に笑われ、ついでに大雅に慰められていた。
「チビガキのナースとかばっちりじゃねえか。今から見るの楽しみにしとこうっと!」
「亜利馬、元気だして」
「う、うん」
 もらった企画書をテーブルに広げ、見つめる。内容は俺がお医者さんの愛人という設定で病院内で絡みが一本、それから患者さんに俺が病室でご奉仕プレイをするのが一本。どうやら俺は「ビッチ」的な役柄らしい。自分から迫ったりねだったりするやつだ。
「嫌だぁ……」
 溜息しか出ない俺の頭を撫でてくれたのは大雅だった。
「俺も、嫌な企画いっぱいあったけど。……やってみると意外と楽しいよ」
「……女装も?」
「うん。うさぎの耳とか、付けたことある」
 可愛い。そして似合いそうだ……。思わず目を細めてほっこりしていると、反対側から潤歩が俺の背中を叩いて言った。
「『スイーツ』のレーベルと違って、男の娘とかいうヤツじゃねえし別にいいじゃねえか。デキるモデルほど色んな企画に挑戦するモンだぜ」
「でも潤歩さんがナースやれって言われたら、絶対断るでしょ」
「あのなぁ、メーカーはちゃんとそれぞれのモデルに合った企画を作ってんだよ。俺が女装しても何の需要もねえだろ。むしろ俺はお前の女装はアリだと思うぜ。やれることの幅が大きいほど評価も高くなるし、仕事もファンも増えるからな」
 潤歩のそれは正論だと思うし、わがまま言っても迷惑をかけるだけだと分かっている。やるしかないけど、憂鬱だ。
 獅琉が普段通りの朗らかな笑顔で言った。
「ここでさっきの話に繋がるんじゃない? AVの中でも色んなモデルと色んなジャンルがあって、見る側がどれを選ぶか自由だし、それぞれのモデルがその需要に合った供給をすればいいって話」
 そんな話だったろうか。

「………」
 頬杖をついて目を閉じ、ちょっとだけ企画内容を想像してみる……。