第4話 片隅のステージ

「で、でもだって、そんなこと言ったって、『これ』は明らかに『普通』じゃないだろ? 世間一般の大半の人が知らない世界で、別に俺が知らなくたって損も得もないことでしょ?」

 焦りながら頼寿とロッソ君の顔を交互に見るが、二人は無表情──というかロッソ君に至ってはニンマリ笑顔を顔に張り付けたまま固まっている状態で、その辺りのことは全く俺と話すつもりはない様子だった。

「で、どうする頼寿。玉雪くんがデビューする時には、ウチの店使ってくれるの?」
「正式デビューのステージは、恐らく玉雪の旦那が用意するんじゃねえかな。ロッソの店を使うとしたら、デビュー前の玉雪を名前を変えて上げさせるとか、その方が良さそうだ」
「そうだねぇ。玉雪くん、デビューしたらすぐ人気者になっちゃいそうだもんね」
「何で勝手に話を進めてるんだよぉ……! 俺やるなんて言ってないのに!」

 座ったままワガママを言う子供のように体を揺するも、二人はお構い無しだ。その後も散々喚いたが、結局二人は俺の話を聞いてくれなかった。頼寿はフルシカトだし、ロッソ君は「平気、平気」と笑うだけ。まるで言葉の通じない異世界に迷い込んでしまったようだった。

「それじゃ詳しい話はまた後日ね。今日は楽しんでよ頼寿」
そう言ってロッソ君が立ち去り、俺は再び頼寿に向かって唾を飛ばした。
「とにかく俺、そんなことできないから!  会長に言ってこの話はなかったことにしてもらう! お前とはもう二度と会わない、サヨナラ!」
 勢いに任せてソファから立ち上がった俺の腕を、頼寿が掴んで引き寄せる。
「うわっ!」

 そうしてバランスを崩した俺は、頼寿の脚の上に座り込む恰好となってしまった。つまりは後ろから抱っこされている状態だ。

「放せ、バカッ……!」
「タマちゃんの癖に、仔犬みてえに吠えてんじゃねえよ。……そのつもりはなかったが、少々ここで躾が必要か?」
「な、何言っ──」
 瞬間、頼寿の手が俺のシャツを上着ごと捲りあげた。
 突然のことで何が何だか分からず、身を捩ることもできない。

「ヒッ……」
 暗がりの中、頼寿の手が俺の肌を弄り始め……すぐに左右の乳首を摘まれた。
「やめっ、……」
「どうせ周りからはよく見えてねえし、声も音楽に消されるだろ。派手に喘いでもいいぜ、玉雪」
「ば、馬鹿野郎ぉ……! 触るなってば、あっ、あ、……弾くのやだ……!」
「下から上に弾かれんの好きだろ。左右同時にな」
 頼寿の指が容赦なく俺の乳首をピンピンしている。弾かれる度に体へ電気が流されるようで、声もまた弾けてしまって……

「へ、変態っ。頼寿のスケベ野郎、変質者の根暗ブサイク! ハゲ!」
「めちゃくちゃな悪口言ってんじゃねえぞ」
「んやあぁっ──!」
 弾かれていた乳首がキュッと摘まれて、俺は自分でも驚くほど大きな声を出してしまった。