第14話 夜城先生、金縛りを体験してみる その2

 駄目だ、こんなの我慢できない。
 まるで祭壇の生贄を舌なめずりして眺める悪魔のように、手足を縛られペニスを勃たせている先生を見つめる。
「……先生、ごめんなさいっ」
 そうして俺はパジャマのズボンと下着を脱ぎ捨て、ベッドに上がり先生の体を跨いだ。

 ベッド横の棚に常備しているゼリーのチューブを指に取り、自分のアヌスを簡単にほぐす。そうして握った先生のぶっといペニスをそこへあて、ゆっくりと腰を下ろしていった。

「はあ、あ……ぁ」
 全身が震える心地好さ、涙が滲むほど切なくも熱い快楽。俺は先生のペニスを体中で味わいながら天井を仰ぎ、声を抑えて少しずつ腰を動かし始めた。

「んあ……チンポ締め付けんな……誰だ」
 流石に先生が目を覚ましたが、まだ半分は夢の中なのだろう。俺を見上げる目はとろんとしている。
「先生ごめんなさい、縛られてる姿、めちゃくちゃエッチで……」
「れいと……?」
「黎人です、……あっ、幽霊じゃなくて、すみませ……あんっ」
「やべえ、気持ちいい……」
 夢うつつでも感じてくれているらしく、俺は嬉しくなって更に腰をくねらせた。

「……ていうか俺、体が動かねえんだが……?」
 縛られていることを忘れているのか、先生はぼんやりとヨダレを垂らしながら俺を見ている。
「まさか、これが金縛りか……?」
「……え、ええと……」
 思わず腰を止めて思案してしまう。もはや先生のドエロい姿を前に、金縛りのことなんてすっかり忘れていたのだ。

「ふ」
 俺が考えていると、先生の表情がホッとしたような、優しい穏やかなものになった。

「すげえな。全く動けねえや、黎人……」
「っ……」
 そんな可愛い顔、滅多に見られない。ただでさえ可愛い先生なのにそんな表情されたら、もう男心と父性愛が一気にくすぐられて呼吸困難になってしまう──。

「せ、先生が動けない分、俺が気持ち良くしてもいいですかっ……?」
「ああ、勿論だ。何せ今の俺は金縛りだし、自分じゃ腰振れねえからな。すげえぞ黎人、手足が動かねえのに勃起はしてんだ。チンポだけ金縛りじゃねえ」
 ……めちゃくちゃ嬉しそう。

「じゃあ、また動きますね。先生は寝てていいですから、ラクにして下さいね」
「おう」
「……んっ、……はぁ……」
 再び尻を上下させ、腰をひねって中で先生のそれを思い切り締め付ける。先生は息を荒くさせながら俺を見つめてくれていた。完全に目が慣れてきた暗い部屋の中、縛られた先生が艶めかしくて堪らない。
「あっ、あぁ……! せんせ……すごい、……!」
「やべえぞ黎人、お前もクソエロい……はぁ、乗られんのも悪かねえ……」
 当然だけど段々と先生も覚醒してきたようで、さっきよりも俺を見つめる目に力が入っていた。

「んあぁ……先生の、腹まできて……」
「は、……黎人、どうせなら上も脱いでくれると捗るんだが……」
「りょうかいです、っ……!」
 腰を振りながら思い切りシャツを脱ぎ捨て、先生の上で全裸になる俺。先生が捗るように股を開いたまま腰をくねらせてエロいポーズを取り、更に後ろに手を伸ばして先生の玉を愛撫する。

「黎人っ、……はぁ、あ……!」
 先生の息遣いが激しくなり、目がギンギンになってきた。
 恐らく俺の腰を押さえてがっつがつに下から掘りたいのだろう。だけど両手は動かず、相当もどかしいに違いない。

「あは……先生、すごい目になってる。さっきまでの可愛くてセクシーな先生はどこに行っちゃったんですか……」
「極上の色情霊が騎乗位で挑発してくるんでな。……黎人、そろそろ金縛りが邪魔になってきたんだが解いてもいいか」
 分かっているのかいないのか、先生は縛られた腕を無理に引っ張って「金縛りから抜け出そうと」している。

「ちょ、ちょっと待って先生。そんな無理矢理したら傷付いちゃいます。いま俺が解いて……」
「フンッ!」
 万歳の恰好のまま先生の腕の筋肉が躍動したかと思ったら、次の瞬間にはきつく縛っていたはずの縄がブチ切れていた。
「え、ええぇっ――!?」
「後は足の方もか……」
「まま、待って。待って先生、俺が解きますから無茶しないでっ……!」
 慌てて先生の上から転がり落ち、ベッドの柱に括り付けていた縄を解く。……それにしても何という腕力だ。もしかしたら先生なら、本当の金縛りに遭っても自力ですぐに解けるかもしれない。

「大丈夫ですか? 腕とか足、痛くない?」
「ああ、ようやくお前を抱きしめられる」
「先生……」
 甘く囁かれ、素直に先生の腕の中に身を投じる――が。

「仕掛けたのはお前だからな。朝どころか夕方頃まで付き合ってもらうぞ」
「へ……?」
 俺をベッドに押し倒した先生の目は、さっき見た時よりも更に妖しくギラついていた。

「覚悟しろよ黎人」
「ま、待っ――」


 そうして俺は鎖から解き放たれし野獣の底無しな食欲により、翌日からしばらくは全身が金縛りになったかの如く激しい筋肉痛に見舞われることとなるのだった。

 今回の件で分かったのは、例え先生が本物の金縛りに遭ったとしても下手に刺激をしない方がいいということ。それから、先生は受け身のセックスでマグロでいることが絶対にできない、ということだ。

 もしかしたら先生は金縛りに遭った経験がないのではなく、遭っていても気付いていないだけなのではないかと思う。
 だとしたら先生は幽霊を見たことがない訳じゃなくて、見ていてもただ気付いていないだけなのかもしれない。

「めっちゃくちゃ腰と太腿が痛い……先生、助けて」
「だらしねえぞ十九歳。若いんだから足腰を鍛えろ」
「セックスのためにですか……?」

 そんな気がする。

 その方が何となく先生らしい。

 第14話・終