第3話 ROSSO -3-

「馬鹿デカい車乗りやがって……」
「男も女もデカいのが好きなんだよ」
「デカさでマウント取ろうとする奴に良い奴はいないけどな!」
 ブツブツと文句を言いながらシートベルトを締める。

 会長は俺を「小柄で可愛い」と言ってくれていたけれど、俺は何気に自分の身長にコンプレックスを持っていた。
 学生時代も男からは大いにマウント取りの対象にされ、女子からはおチビちゃん扱いされてからかわれ、活躍できる場と言ったら文化祭での女装ぐらいだったのだ。

 別に、会長が良いと言ってくれるのだから身長なんて気にすることない。会長以外の奴に「可愛い」と言われてもときめかないのと同様に、会長以外の奴に何を馬鹿にされたっていちいち腹は立てない。それが俺にとっての品格というモンだ。

 だけど「チビタマ」はあまりにも酷い。これまでのことも含めて、文句の一つも言いたくなる。

「……全く。デカければいいってモンじゃないっての」
「経験ねえのに何言ってんだお前」
「ちっ、違うだろ! 俺がしてるのは身長の話っ!」
 そんな馬鹿話をしつつ車は走り、三十分ほど経ったところで頼寿がコインパーキングに車を入れた。

「着いたの?」
「ああ、降りていいぞ」
 シートから飛び降りるようにして地面に着地し、頼寿が出てくるのを待つ。風が思ったりよりも冷たくて、マフラーを巻いてくれば良かったと思った。

「行くぞ、こっち」
 降りてきた頼寿が俺の背中を押して歩き始める。
 一体どこに行くんだろう。この辺は特にデートスポットでも何でもなく、買い物をする店も殆どないしオシャレなカフェも、アイス屋さんもない。
 どちらかというとラブホテルや風俗店などの多い、少しいかがわしい町だ。

「まさか俺を風俗に売る気じゃ……」
「お前じゃそこまでの値段にはならねえだろうな、チビで生意気だから」
 ──いちいちムカつく。

「じゃあどこ行くんだよ? 言っとくけど俺、少しでもつまらないと思ったらタクシーで帰るからな」
「退屈はしねえと思うぜ」
 時刻はまだ昼前、十一時。この時間帯の風俗街はひっそりと静まり返っていて、どれが目的の場所なのか見当もつかない。

 何となく不安で頼寿の隣にくっ付いていると、しばらく歩いたところで頼寿が「ここだ」と立ち止まった。