第2話 頼寿との共同生活 -7-

「………」
 そんな俺を見て、頼寿が口元に手を当て肩を震わせている。
「なに笑ってんだよ……」
「いや、見くびってたぜタマちゃん。てっきりめそめそ泣き出すのかと思ったら、いい根性してるじゃねえか」
「……言っとくけどショックはショックなんだからな。今は怒りが先にきてるってだけで」
 相当ツボに入ったのか、頼寿は手の甲で自分の目尻に滲んだ涙を拭っている。
 まさかこんなことで、頼寿の初めての笑顔──といっても所詮は邪悪な笑顔だが──を見ることになるとは。

「前向きに考えろよ、玉雪。あの会長の要望通りにしてりゃ一生食うに困らねえし、この生活も維持できる。新しいビジネスだ。利用してやれって」
「ビジネス……?」
「ああ。でもって、俺がお前のビジネスパートナーだ。あくまでも仕事上の付き合いだが、お互い楽して稼ごうぜ」

 ビジネスと言ったって、そんな急に対応できる訳がない。
 ていうか頼寿は全部分かった上でこの「依頼」を引き受けたってことか。

「……あんた、何者なの」
 震える声で問えば、頼寿が俺の上へ身を倒しながらそれに答えた。
「職歴としてはAVモデル、SMクラブ、ヤクザとか金持ちの坊の性的矯正、その他依頼によって色々、ってとこだな」
「は、はぁ……」
「今はお前のパートナー兼、性教育係だ」

 今はもう頼寿の顔が俺の鼻先数センチのところまできている。
「せ、性教育って……何するってんだよ。まさか俺を抱くとか言い出すつもりじゃ……」
「性処理を兼ねて、パートナーとしての体の相性を確かめておきてえんだが」
「じょっ、冗談じゃねえから! 俺まだその仕事やるとか言ってないし、性処理だってさっき抜いたから今は必要ないし!」

 ここまで大事に守ってきた貞操を、こんな訳の分からないうちに散らすなんて絶対に御免だ。百歩譲ってこれが三上会長の要望だと言うなら、せめて初めては会長に見ていてもらいたい。

「最後までヤらねえよ。初物でいきなりブチ込んで後処理に苦労するのは俺だからな」
「だ、だったらもう離れろっ……」
「言っただろ、ビジネスだ。嫌なら目つぶって旦那のことでも考えてな」
「そういう問題じゃ、あぁっ……」
 頼寿の左手が、スルリとシャツの中へ入ってくる。いとも簡単に探り当てられた乳首を軽く摘ままれ、瞬間的に背中がシーツから浮いてしまった。