第2話 頼寿との共同生活 -6-

 ダブルベッドの上で小動物のように身を強張らせる俺。頼寿は俺の部屋をきょろきょろと見回した後で、最後にベッドの上の俺に視線を落とした。

「性欲が有り余ってる割に、エログッズなんかは持ってねえのか。バイブの一本くらいはあるんじゃねえの」
「あっ、あるかぁっ!」
 デリカシーのない言葉に憤る俺を見て、頼寿が鼻で嗤った。

 そして──

「なんだ。三上の旦那とセックスできねえ分、自分でバイブでも使ってるかと思ったぜ」
「え、……。な、何で……会長と俺のこと、知ってるんだ……」
「知ってるも何も」
 頼寿の片膝がベッドの上に乗る。

「業界じゃ有名だぜ。三上グループの代表は、絶対に愛人を抱かねえ」
「どういうこと……?」
「自分じゃ抱かねえが、自分の愛人が他の男とセックスすることに最大の興奮を覚える。……捻じ曲がった性癖の持ち主ってことだ」
「………」
 頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなった。
「そのためには幾らでもカネ使うんだってよ。一発目の前でヤるだけで二十万だと」

 会長は愛人を抱かない。だけど、他の男と……?
 金を払って、愛人が寝取られる場面を見るのが趣味だって……?

「そ、そんなの嘘だ……」
「別に寝取られ趣味なんて珍しくもねえし、こんなこと嘘ついても仕方ねえだろ」
 頼寿が、俺の上を膝で跨ぐ。

「お前の世話をするのも仕事だが、どちらかと言えば『それ』を俺は依頼されている。『玉雪をどこに出しても恥ずかしくないSMスターに育て上げろ』ってな。いわば俺はお前の性教育係だ」
「………」
「ショックだろうが、受け入れるしかねえ。別に会長はお前が憎くてそうした訳じゃねえし」

 今まで一年間俺を抱かなかったのは、全てはこのためだったのか。

 茫然とする俺の頬を撫でて、頼寿が「大丈夫か?」と冷たく笑う。
「本当ならもっと後にネタバラシしようと思ったんだが、つい口が滑っちまった。……言っておくが泣くんじゃねえぞ。俺はガキに泣かれるのが大嫌いで──」
「ううぅ……があぁあぁぁッ──!」
「っ……!」
 恐竜のように腹の底から吠えた俺に、上に乗っていた頼寿が一瞬ビクつく。

「な、何だてめぇ急に叫んで……」
「おっ、俺は一途に会長のことずっと待ってたのに! 一生待ってたところで一度も抱かないってことかっ?」
「……まあ、そういうことだ」
「あれだけ俺のことあれこれしといて、わざと寸止めしてたってことっ?」
「まあな」
「かっ、会長の馬鹿野郎──ッ!」

 仰向けのまま天井に向かって叫ぶと、ほんの少しすっきりした……気がした。少なくともショックによる涙は引っ込んだ。
 頼寿は俺の誕生日プレゼント……なるほど。そういうことだったのか。