第2話 頼寿との共同生活

 五月二十二日──
「んん……」
 いつもの朝。アラームをかけずに好きな時間に起きるという幸せに、柔らかなベッドの中で寝返りを打つ俺。

 このベッドで何度も会長と抱き合った。結局最後まではしてないけれど、枕にも毛布にも充分に会長の香りが残っている。幸せな朝……。

「起きろ、寝坊助」
「……ん……?」
「朝だぞ、起きろ」
 いやに低い声がする。ぶっきらぼうで、全然優しくなくて、氷のように冷たい声。

「なに、誰……?」
「朝飯ができている。さっさと起きて顔を洗え」
「………」
 そうだ、この男は俺の十九歳の誕生日プレゼント……堂島頼寿。

「何だよ、その目は?」
「いや……本当に食事の用意してくれるんだと思って……。俺、てっきり何か買ってくるんだと思ったから」
「完全に人をナメきっていた、ってことか」
「そんなことないけど……」
 別に構わないが、頼寿がこんなに態度の悪い男だと思わなかった。お世話役といえばジェントルマンな執事を想像していただけに、若干肩透かしを食らったような気分になる。

 朝から完璧な男前。昨日のスーツも似合っていたけれど、今朝のTシャツとジーンズでもかなりのイケメンオーラが放出されている。俺の好みじゃないけれど、一般的な感覚でいえばかなりモテるだろうなとぼんやり思った。

「朝ご飯、何……?」
「タマゴとサラダ、ハムサンドにコーンスープだ」
 大したモンじゃないな、と思いながらリビングへ移動すると、ふわりとタマゴの良い匂いがして腹の虫が鳴いた。てっきり目玉焼きか何かだと思っていたのに、皿の上には立派なオムレツが乗っている。その隣にはボリュームのあるハムサンド。思わず唾を飲み込んだ。

 洗顔その他を済ませてリビングのソファに座り、早速オムレツの皿を持ち上げる。ケチャップとマヨネーズにタマゴのふわふわした匂い。俺がオムレツ好きということは、会長から聞いたのだろうか。

「いただきます」
「おう、めいっぱい食え」
 俺がこれから食事をするというのに、頼寿はキッチンの換気扇の下で煙草を吸っている。既に一仕事終えてフリーだとでも言うように、スマホを弄りながら。
「……美味し」

 オムレツもハムサンドもスープも俺好みで最高の味だったけれど、一人で黙々と食べる朝食というのは少し寂しかった。会長が泊まった日はもちろん二人で朝食を取るし、それ以外の日でもスカイプ通話をしながら一緒に朝のひと時を過ごしていたのに。