ブレイズ、初めてのお泊り会 -7-

 その夜は俺が期待していた通り、笑い声の絶えない賑やかな夜になった。
 五組の布団を敷いて各々寝転がったり煙草を吸ったりお菓子を食べたり飲んだりしながら、思い付きで色々な話をする。初恋がどうの、初めての相手がどうの、まるで女子会だ。

「今度さぁ、全員で同じVに出たくない?」
 ほろ酔いの獅琉がそう言って、敷いた布団の中央であぐらをかいた。
「俺が性教育の先生で、皆が生徒なの。そんで二組のカップルがセックスすんのを俺が指導するの」
「何だそりゃ。今更お前に教えられることなんかあるか」
 潤歩がゴロ寝の恰好でさきイカを食べながら言う。片膝を立てているせいで浴衣が捲れ、パンツが丸見えだ。
「そりゃそうだけどさ。そこを演じてこその企画じゃん。ていうか俺が見たいの。例えば亜利馬と潤歩、大雅と竜介が向かい合ってバックでしてるとして、……ちょっとコッチきて、亜利馬と大雅。そこで向かい合って四つん這いになって」
「………」
 言われるまま俺と大雅は獅琉の前で四つん這いになった。酔っている人に対しては素直に従った方が面倒臭くならずに済む。
「で、二人共後ろからパートナーに突かれながら、こうして、こう……」
「わっぷ!」
 獅琉が俺と大雅の後頭部を押し、強引にキスをさせる。
「いいねこれ! ウケの子達がイチャついてるの見るだけで幸せになれるよ」
「そんじゃ、突くぞ亜利馬!」
「えっ? や、……ちょっと、潤歩さん!」
 後ろから浴衣を捲られ、突き出した尻に潤歩が腰を打ち付ける。昼間もこんなことがあったような気がするけど──たちの悪いことに、今の潤歩は極限まで酔っ払っている。
「エロい声出せ、オラ!」
「だ、出せるかぁっ!」
「……じゃあ、大雅の相手は俺がしようかな」
 更には同じく酔っ払った竜介までがそれに便乗し、大雅の背後から腰を押し付けた。
「やだ、竜介。あっち行け……」
「そう言われると逆に燃える。分かってんだろ、大雅」
「や、……」
 可哀想に、大雅は風呂上りの時よりも顔が赤くなってしまっている。無理矢理の疑似セックスをさせられる俺達を見て獅琉は手を叩き、心から嬉しそうに笑っていた。
「いいねいいね。それで亜利馬と大雅がチューすれば完璧」
「こ、この酔っ払い共!」
 この茶番は一時間くらい続いたが、ふと飽きた獅琉の「そろそろ違う話しない?」の一言でようやく俺達は解放された。ウケモデルの雑な扱いはどうかと思ったけど、このくだらない辱めが続くよりはずっとましだ。
 その後は布団に包まってお決まりの怪談をし、時計の針が零時を回る頃……俺は意識をなくした。

 次に目が覚めた時は部屋が真っ暗になっていた。スマホで確認すると、午前二時。他の四人もそれぞれの布団で寝息をたてている。
「………」
 こんな時に限って尿意に襲われてしまった。ジュースをたくさん飲んだのにトイレに行かず寝落ちしてしまったから、無理もない。ちなみにトイレは襖を開け和室を出て、玄関スペースの左側だ。サッと行けばすぐ終わる。
 みんなを起こさないように布団を跨いで襖へ向かい、そっと開いて玄関へ出る。と──
「えっ、うそ……」
 トイレのドアには「故障中、ご迷惑おかけします」の張り紙があった。達筆な文字で書かれたそれは、確かに昼間はなかったものだ。夕飯を食べ終わって戻って来た時にもなかった。俺が寝てる間に潤歩辺りが何かやらかして故障したのだろうか。
「………」
 俺は黙ったまま部屋へ戻り、寝ている獅琉の肩を揺すった。
「獅琉さん。……獅琉さん、起きてください」
「ん……亜利馬。なに、どうしたの……」
「トイレ付いてきてください……」
「えー……眠い」
 ゴロンと寝返りを打ってまた寝てしまう獅琉。俺は唇を強く噛み、薄情なリーダーの気持ち良さそうな寝顔を凝視した。