もういい。何だっていい。
「あぁっ……」
 桜色の乳首を口に含むと、混一が背中を浮かせて声を弾けさせた。
「あ、あっ……。浩介さん、もっと強く、吸って……。あぁっ!」
 匙加減が分からなくて困ったが言われた通りにすると、混一が嬉しそうに俺の頭を撫でてくれた。
「そのまま、俺のここも触って……」
「ん、……うん」
 俺と同じくらい勃起している混一のそれを握りしめ、激しく上下に手を動かす。混一は俺のぎこちなくも荒々しい愛撫にうっとりとした表情を浮かべて、俺の髪に指を絡ませた。

 硬いけれど弾力のある混一のその部分を扱きつつ、俺は数瞬迷ってから言った。
「混一……その、さっき、混一が俺にしてくれたみたいに、俺も口で……」
「してくれるんですか? 嬉しいな」
「へ、下手だとは思うんだけど……」
 じゃあ、と言って混一が身を起こし、ベッドに寝かせた俺の顔を跨いだ。緊張しながら目の前にある混一のそれをじっと見つめ、恐る恐る唇を近付ける。
「この体勢だと浩介さん動かなくていいでしょ」
「いいけど、なんかエロいな」
「だよね。俺も凄くエロい気分になる」

 軽く咥えた先端に舌を這わせると、混一が気持ち良さそうな溜息をついた。思い切ってもっと奥まで咥え込んでみる。
「っふ、あ……。浩介さん、平気……? 無理してない?」
 何とも言い難い味がしたが、決して不快ではない。咥えたまま頷いた俺を見て、混一も嬉しそうに頬を緩ませている。
 しばらくの間混一のそれを愛撫していると、上からくぐもった声が聞こえた。
「はあっ、ぁ……。ごめんね、浩介さん……ごめん」
「ど、どうしたの……」
「我慢できないんだ、俺……。浩介さん、挿れて……」
「っ……」
 ついにその時が来てしまったのか。今さら後戻り出来ないのは当然だけど、男と経験のない俺には、ここからどうして良いのか分からない。
 そもそもこの俺に彼を満足させることが出来るのだろうか。金を払っているにも関わらず混一を悦ばせなきゃならない気がして、途端に不安で一杯になる。

「浩介さんごめんね……」
「あ、謝るのは俺だよ。多分俺、……下手だし」
「大丈夫。そのまま寝てて、俺が自分で挿れるから」
 申し訳ない。情けない。もし許されるなら、一度違う男と経験してから混一に会いたかった。多少なりとも経験があれば混一に謝らせることもなかったし、俺も情けない思いをしなくて済んだかもしれないのに。
「……ん」
 その部分にゴムを付けてから、混一がゆっくりと俺の上に跨った。
「は、あっ……」
 腰を落とした混一が俺の胸に手を付き、天井を仰いで艶めかしい溜息をつく。下から見上げるその姿は本当に美しくて、ゴム越しでも伝わってくる混一の温かさに意味も無く泣きそうになった。

「気持ちいい? 浩介さん……」
「ん……いい、すげえいい……」
「俺も……」
 混一の腰がゆっくりと上下しだす。痺れ蕩けるような快感に文字通り手も足も出せない俺は、ただ寝転がった状態でされるがままになっていた。
「はぁ、っあ……。あ、……浩介さん……」
「ほ、混一……。大丈夫なのか? その、痛くねえの……?」
「痛そうに見える……?」
「……っ、……」
 徐々に激しくなる腰の動きに、俺の中のオスの本能が完全に覚醒したのか。いつの間にか俺は混一の腰を支えて自らも腰を動かしていた。下から突き上げると俺の上で混一の身体が跳ね、形の良い唇から声が洩れる。それが見たくて、聞きたくて、俺は必死に腰を動かした。

「あっ、あ……! き、気持ちいっ……よ、浩介さんっ……!」
「お、俺もっ……」
「もっと思いっ切りやりたい……?」
 頷いた俺に笑ってみせ、混一がその場から身体をどかした。そのまま壁に手を付き、腰を突き出して俺を振り返る。何をどうすべきなのかはすぐに理解した。
「混一……」
 のろのろと立ち上がった俺は後ろから混一の身体を抱きしめ、震える手で握ったそれを彼の中へ少しずつ収めていった。
「っく……」
 締めつけられる感覚が半端じゃない。奥まで入ったそれが抜けてしまわないよう、更に奥の奥へ進もうと腰に力を入れる。すると混一が潤んだ目で俺を振り返り、「そこに当てられるの、好き」と恥ずかしそうに呟いた。
 そんなことを言われたらもう訳が分からなくなる。男相手だとか未経験だとかは一切関係なく、混一を悦ばせたい。そのことしか考えられなくなる。

「あぁっ……! 浩介さんっ……、あっ、あぁっ」
 俺はしっかりと混一の腰を支え、何度も腰を前後させた。
 打ちつける度に揺れる混一の身体。飛び散る汗。頭の中で大量のドーパミンが分泌されるのが分かる。セックスってこんなに素晴らしいものだったのかと、感動すら覚えるほどだった。
「うあ……ぁ、あっ……!」
 混一は背中を反らせ、涙を零しながら喘いでいる。堪らなくなって強く抱きしめると、振り向いた混一が俺にキスをしてくれた。
「は、ぁ……」
 舌を絡ませながら、伸ばした手で混一のそれを握る。雄々しく反り返ったそれは今にも果ててしまいそうなほどに熱くなっていた。
「イきそう? 俺、擦ってるからイッていいよ……」
「ほ、ほんと……? 浩介さん、乳首も弄って……」
「いいよ、乳首も」
 後ろから混一に密着し、硬くなったそれと乳首を同時に愛撫する。下半身では混一がさっき好きだと言っていた所を俺自身で何度も突いてやった。
「ふあ……、あ……気持ちいい。俺達、相性良いかも。本物の恋人同士みたいだね……」
「…………」
 その言葉に切なくなった俺は更に激しく腰と両手を動かした。

 俺もそこまで馬鹿じゃないから、どんなに頑張っても本物になれないことは分かってる。混一だって本心からそう言ってる訳じゃない。
「あっ……、あ……イきそう……!」
「俺も……」
 出来ればこの夢のような時間を終わらせたくなかった。ずっと二人で繋がっていたかった。迸った混一の精液を片手に受け止めながら、俺は必死で自分に言い聞かせる。
 今夜、金で夢を買っただけ。金さえ払えばいつでも夢の続きを見られるんだ。
 ……それが空しいことだというのは分かっているけれど。