幸せと涙に濡れる夜 -4-

「チル」
 呼ばれて顔を上げると、穏やかな笑みを浮かべたハルトが俺を見ていた。
 ぎこちなく寄り添い、その胸に手を置いて上を向く。塞がれた唇と抱き寄せられる背中、腰。ハルトに借りている俺の部屋。抱かれたままの恰好で、すぐ後ろのベッドに押し倒された。
「んっ、……」
 相変わらず慣れなくて、肌にキスをされるたび耳まで赤くなってしまう。大人なハルトの大人の愛撫。初めてこのベッドでマッサージされた時とは勿論、風呂場で初めてのセックスをした時とも全然違う、俺を気遣う優しい手付き。
 幸せだった。
「愛してる」
 そんなことを俺に言ってくれる人と出会えるなんて、これ以上ないくらいに幸せだった。

「俺も、好き……ハルトが、大好きだ……」
 生まれて初めて本気の恋をした相手は売り専の社長だったなんて、地元じゃきっと誰一人信じてくれないだろう。何だか可笑しくて、俺はハルトの目を見つめたまま少し笑った。

「……ハルト、……」
 ゆっくりと捲り上げられたTシャツの中に入ってくるハルトの手。肌に直接触れる唇。愛おしむように何度も胸板にキスをされ、心音が伝わってしまうのではと思うと息が止まりそうだった。
「ふ、ぅ……」
「チルの弱いとこは前に研究したからな」
 小さく尖った乳首を含まれ、少しだけ強く吸われる。たったそれだけで蕩けそうなほど体が熱くなり、ハルトの下で腰が疼いてしまう。声を抑えても俺が感じていることはハルトにはとっくにバレている。恥ずかしくても隠し事なんて出来ないんだ。ハルトの前で俺は、身も心も裸にされる──。

「ああ、……あっ、ハルト……」
 口の中で俺の乳首を転がしながら、ハルトの手が腰から腹へと移動した。片手でベルトを外され、ファスナーを下ろされ、あっという間に脱がされてしまう。
「ふあ、ぁっ……! そん、な……ぁ、駄目だっ、て……」
「チル、すげえヤラシい……」
 乳首を嬲る熱い舌、そして剥き出しのペニスを揉みしだく大きな手。卑猥な音と刺激が二重の快楽となって、外からも、そして内側からも俺を震わせる。俺は力の入らない左手でハルトの髪を緩く掴み、潤んだ目でハルトの伏せられた目元を見つめた。

「いっ、あ……、ハル、ト……! もう、それ……やめ、……!」
「やめたくねえ」
 ハルトの手の中、握られた俺のそれはいつ達してもおかしくないくらいに膨張している。
「痛てえのか?」
「ち、違っ……。何でそこばっか……、す、すぐイッちゃうから、ぁっ……」
「やっぱ俺は男だし、ゲイだしさ。同じ男として一番イイとこ可愛がってやりてえんだ」
「で、でも恥ずかし、……」

 ハルトが小さく笑って、俺の耳元に唇を寄せた。
「感じてんだろ、チル。言ってみろよ」
「えっ、……や、やだ……ぁっ……」
 手の動きが上下に扱くものから、ゆっくりと撫で回すものになる。形を確かめるように根元から先端を揉まれ、指先で擽られ、また強く握られる。
 ただでさえ顔真っ赤なのに、更にハルトが耳元で囁いた。

「言えって。俺にどこを握られて、どうされたいのかをさ」
「な、何でっ……あ、やだっ……や、もう、イきたいっ──」
「言ったらイかせてやる」