初体験、結ばれない夜

 静かな浴室には俺達の荒い息遣いと、お湯の跳ねる音だけが響いている。

「んっ、あ……あっ、ハルト……」
 浴槽の中で抱き合い、唇を貪り合いながら、互いのそれが湯船の中で激しく擦れ合う。俺はハルトの上に座り込んだ状態で首に腕を絡め、夢中になってハルトの舌を味わった。キスだけでこんなに興奮するなんて信じられない。そうしている間にも熱はぐんぐん上昇してゆく。
「はぁっ、あ……」
 ハルトの舌が顎のラインをなぞり、首筋をなぞり、下へ下へと降りてきた。それから背中を強く引き寄せられ、胸元に舌を這わされ、敏感に尖った乳首を口に含まれる。
「あ……、う」
 熱い刺激が一点から背中にまで行き渡り、やがて腰が疼き始める。それは前に玲遠から受けたものとは少し違う感覚だった。あの時は混乱していたのもあるけれど、こんなに淫らな気分にはならなかった。もっとして欲しい、止めてもらいたくない、なんて思わなかった。

 相手がハルトであるからと信じたい。こういうことは本当に心から好きな相手と、なんて青臭い理想は持っていないが、少なくとも信頼できるハルトで良かったと思いたい。

「固くなってる」
「……そんな、ふうにされたら……当然だろ」
「玲遠にもされたか?」
「………」
 沈黙することでそれを認めてしまい、恥ずかしさについ唇を噛む。
「いいんだよ別に、隠す必要はねえ」
 言うなりハルトが立ち上がって俺の腕を引き、そのまま浴槽縁に座らせた。

「ただ俺はそれ以上のことをしてやりたいってだけでさ」
「ハルト、……?」
「コッチもされたか? 言ってみろ、チル」
 自身の唇を舌で湿らせ、ハルトが俺の片脚を持ち上げる。背後に何もないからずり落ちそうになってしまい、思わずハルトの肩に手を置いた。
「んあぁっ……!」
 濡れた唇が一気に俺のモノに被せられ、咄嗟の刺激に浴槽縁から腰が浮いてしまう。

「されて、なっ……。されてない、こんな、ふうには……あぁっ!」
「ん。……じゃあ俺が初めてか」
「うあっ、喋んないで……!」
 玲遠と大河に咥えられたのは覚えている。あの時も気持ち良かったけれど、それ以上に視界に入る光景が衝撃的だったからか、自身に与えられる刺激にまで集中できていなかったのだ。
 生まれて初めての衝撃。生まれて初めての快楽。こんなに余裕が持てなくなるほど気持ちの良いものだなんて。信じられない──訳が分からない。
「あっ、あぁ……! やべ……もう、立ってらんな、ぃ」
 かと言って大人しく座っていることもできず、俺は前屈みになってハルトに腰と尻を支えられたまま、握った拳を浴槽の壁に叩き付けた。