世話焼きボーイ -6-

 それから深夜零時半、無事に本日の業務も終わった。帰り支度をして事務所内を消灯し、しっかりと鍵をかけてハルトと共にビルを出る。
「………」
 玲遠の色々な言葉のせいで、何となく気まずい。
「夕飯は買って帰るか。腹減ったから弁当二個食える」
「うん。じゃあ俺、買って来るから……外で一服しててよ」
 気まずい空気から逃れるようにして、俺は角のコンビニに駆け込んだ。

 ここに来た時は絶対に入れないと思っていた風俗街のコンビニだ。今では、無防備に財布だけを握りしめた状態で買い物をすることもできる。
「チルちゃん、お疲れ様」
「あ、お疲れ様ですリナさん」
 意外にも近隣店舗の従業員同士仲が良い。俺もハルトにくっついて他店の黒服と会話をするうち、近所の嬢から顔を覚えてもらえるまでになった。この辺りで唯一のコンビニに毎晩同じ顔触れが集まるのだ。一種の社交場になっていて、別店舗の黒服同士が煙草を吸いながら愚痴の言い合いや客の情報交換をしている時もある。
「おっ、チル。お疲れ、今帰り?」
「あ、はい。お疲れ様です高崎さん」
 嬢の子達も、黒服の人達も。初めて都ノ町に来た時は怖くて仕方がなかったのに、話してみれば皆良い人だ。

「社長によろしく言っといて。今度飯でもって」
「分かりました、伝えときます」
「あ、私もハルくんと飲みに行きたい」
「わ、分かりました」
 風俗嬢とキャバクラのボーイと売り専のスタッフという、妙な組み合わせだ。そう思うと可笑しかったが、ここでのハルトの人気ぶりは素直に誇らしかった。

「買ってきたよ」
「おう」
 コンビニを出て、二人また肩を並べてマンションへ向かう。俺もハルトも黙ったままだ。
 ハルトのことを良く言われるのは嬉しい。……だけど今は、ただただ気まずい。普段は引っ切り無しに喋るハルトが黙っているというだけで、胸の奥が苦しくなって、何でもいいから叫び出したくなる。
「………」
 沈黙は部屋に戻って弁当を食べている間も続いた。テレビが点いていないからダイレクトに伝わる空気が重たくて、箸が全く進まない。
 このままじゃ駄目だ。何でもいいから話さないと。
「あのっ、……」
「チル、……」
 タイミングを見計らっていたら同時に言葉を発してしまい、俺はハルトと顔を見合わせた。