世話焼きボーイ

 あれから約二週間後。八月二日、午後三時。昼飯というには少し遅すぎる時間だが、これもこの事務所では普通のことだ。
「悪いな、昼飯買いに行かせちまって」
「……大丈夫」
 咥え煙草でソファに寝転がっていたハルトに財布を返し、汗だくになった額を手で拭う。
「トマトチーズバーガーと、フィッシュ&チップスと、Lサイズのジンジャーエールで合ってる? 武志さんは、エビチリバーガーのセット」
「ありがとう、チル君」
「ああ、マジで腹減った」
 子供のように目を輝かせながら、ハルトが袋をがさごそと開ける。
「それ、あいつらの分か?」
 お菓子やら飲み物やら雑誌、煙草が大量に詰まったコンビニ袋が三つ。「ついでだから皆の分も買ってきます」なんて言ったのが間違いだった。最高気温三十五度の中をこんな大荷物で、まるでパシリにされた気分だ。しかもそれらは全て、ハルトのポケットマネーで買ったものだった。

「じゃ、ちょっと渡してきます」
 六人分の注文が詰まった重い袋を持ち上げて、事務所を出る。隣の待機室をノックしてドアを開けると、中にいたボーイ達は皆テレビの前に集まって騒いでいた。
 大型テレビにはホラーゲームらしきグロテスクな映像が流れている。コントローラーを握っているのは俺と同い年の新人であるトオルと、玲遠だ。
「馬鹿、そこは足を狙え! そいつは体撃って倒しても、跳び上がって襲ってくるんだよ!」
「うわ、すいません玲遠さん、でももう残弾が……」
「俺が惹きつけてる間に、後ろ回ってナイフ使え!」
「下だよ、もっと下。馬鹿、違う! 膝のところ狙ってナイフ連打」
「そうそう、そうだよ。トオルやればできんじゃん!」
 周りのボーイ達もトオルに色々と指示を出している。こうして見ると、何だか放課後の中学生みたいだ。俺もよく友達の家に皆で集まって、騒ぎながらゲームをしたっけ。

「あの、頼まれてた物買って来ましたけど。どれが誰のだか……」
 遠慮がちに後ろから声をかけると、玲遠が画面の中でショットガンを構えながら、誰よりも早くそれに答えた。
「俺のアイス! マカダミアナッツ入りのベルギーチョコ!」
「玲遠さんはアイスですね。他の皆は──」
「煙草!」
「お菓子とパン!」
「何か炭酸系のジュース」
 次々に声が重なり、俺は慌てて言われたものを袋から出して行った。遠慮のない「中学生」達。おまけに、誰一人として俺を振り返ろうともしない。完全なるパシリ状態だ。