亜利馬、格差社会に苦笑する -3-

「亜利馬は、見てる皆にももうバレてると思うけど……あんまり運動は得意じゃなさそうだね」
 フリスビーを持って汗だくになった俺に、獅琉がマイクを向ける。
「う、うん……中学も高校も、スポーツ部に入ってなかったし……体育の成績も……」
 ぜえはあ言いながらそれに答えると、「じゃあ何が得意なの」と大雅に言われた。
 得意なこと。……俺が得意なこと、何かあったっけ。
「うんと……あっ、そうだ。俺は記憶力が良い方だよ。般若心経とか、寿限無とか全部言えるよ」
「すごいね。じゃあ元素記号なんかは楽勝だね!」
「え、……?」
「……というわけで、次は潤歩と竜介の方に突撃してきます。一旦、CM!」
 獅琉が軽快な足取りで俺達から離れて行った。
「俺は元素記号もお経も分からないよ。元気出して、亜利馬」
「ありがとう大雅……」

 潤歩達の所では時折笑い声も起きていて、何だか凄く楽しそうだ。マイクを奪った潤歩が獅琉にもボールを投げさせ、そのおぼつかない投球フォームにまた笑い声が起きる。動画として考えると、断然あちらの方が盛り上がっていた。
「うーん」
 無口な大雅と無能な俺とでは、あんな風にできない。それならもう、乗っかるしかない。
「おーい、潤歩さん竜介さん。どうせならチーム対抗で何かやりましょうよ」
「いいな、ナイスアイディアだぞ亜利馬」
 竜介はそう言ってくれたが、潤歩は目を細めて俺を睨んでいる。
「見てたぜお前ら、バドミントンの時から」
「うっ……」
「チーム戦なら俺は竜介と組むからな。それでもいいなら受けてやる」
「えぇっ! そんなの大人げなさ過ぎます! 俺だって竜介さんと組みたいです!」
「……俺も竜介がいい」
 両側から俺と大雅にしがみつかれた竜介が「我ながら人気者だな!」と豪快に笑った。潤歩は更に面白くなさそうに腕を組み、地団駄を踏む勢いで「ガキ共がナメやがって」と怒りをあらわにしている。

「獅琉っ、お前が俺と組め。こいつらを血祭りに挙げるぞ」
「いいけど、何で勝負するの? 三対二でもできそうなものって、あるかな」
「実質一対二だ。何だって勝てるだろ」
「……大雅。俺達、カウントされてない」
 耳打ちすると、大雅が唇の端を歪めて笑った。
「馬鹿にしてるね。思い知らせてやるよ、潤歩」
 ──こ、怖い。

「……よしっ、それじゃあ潤歩さん。バドミントンで勝負です!」
「はぁ? お前ら一発も打てなかったじゃねえかよ」
「打てます! 大雅は本気出したら凄いし、俺は本番には強いんです!」
「……あんだけNG出しといて、よくそんなこと言えるな。……そんじゃ大雅か亜利馬が俺達から一点でも取ったら、お前らの勝ちにしてやるよ」
 よし。よしよし。破格の条件だ。いけるはず。

 ケンさんにラケットを借りて、ブンブンと前後に振りながら手に馴染ませる。
「お前ら、張り切り過ぎて怪我するなよ」
 これも一応は仕事なのに、キャンプ用チェアに座った山野さんは興味なさげな様子でコーヒーを飲み、パソコンを開いていた。その横で撮影係のケンさんが、「面白いのよろしく」と笑っている。
「じゃあ、山手線ゲームでもしながらやろうか」
 獅琉のほのぼのした提案に潤歩と竜介が賛成し、話し合った結果「バドミントンをしながら『自分が好きな男のタイプ』を言い合う」という不気味なゲームをすることになった。