第1日目の災難 -11-

 何の躊躇もなく体を回転させると、ハルトがまた俺の肩や二の腕、胸から腹を強く、優しく揉んでくれた。体が軽くなっているのが分かる。こういうのをリフレッシュする、と言うのだろう。

 ハルトがベッド横の棚からタオルを取り、浮かせた俺の腰の下に敷いた。それから、棚の引き出しを開けて何か透明の液体が入ったボトルを取り出す。
「散宙、パンツ脱げ」
 キャップを空けて手のひらに液体を垂らしながら、ハルトがさも当然のように言い放った。
「え、何で?」
「穿いたままだと後処理が面倒だからな」
「………」
 ハルトが両手を合わせ、その妙な液体をにちゃにちゃと手のひらの中でかき混ぜる。これから何をされるのか。想像すると、温まった体が別の意味で更に熱くなった。
「何でっ……だってこれ、ただのマッサージなんじゃ……」
「ウチでは〝これ〟もオプションに入ってるんだ。早く脱げよ、この手を無駄にさせるな」
「い、いいよ俺、そんなのはっ……。だってそんなの、始めの約束に入ってないし」
「だってだってうるせえな。もたついてると延長料金払わせるぞ。30分で五千円」
「う……」

 凄まれて仕方なく、俺は震える両手を下着に添えた。──が、どうしても下ろせない。ベッドに寝たまま男の前で下半身を曝け出すなど、そんなの普通では絶対に考えられないことだ。
「嫌なら目つぶって、女にされてるとでも思っとけよ」
「ほ、本当にやらなきゃ駄目なのか。俺、こんなの本当に……」
「分かった。取り敢えず脱げ」
 どうやら何を言っても駄目らしい。俺は一つ深呼吸し、きつく目を閉じてから下着を掴んだ両手に力を込めた。目を閉じたのは女を想像するためじゃない。他人に自分のそれを触られるところなんて、見たくなかったからだ。

「っ……」
 下着に覆われていた部分が直接空気に触れ、せっかく温まっていた体にひやりとした寒気が走る。煌々と灯る明かりの下、今俺は、ハルトの前で下半身を曝け出しているのだ。
 閉じた瞼の向こう側でハルトが笑った。
「縮こまってるぞ。そんなに恥ずかしいか、散宙」
「い、言うなっ……。あっ……!」
 突然握られて腰が浮き、反らせた喉の奥から自分でも驚くほどの高い声が出た。慌てて口を塞ぎ、ハルトの手から逃れようと腰を捩る。それなのに……

「おいおい、ちょっと触っただけで腰くねらせてんのか。意外と素質あったんだな、お前」
「違っ、う……! だって、ぬるついてて気色悪いっ……」
 ハルトが組み合わせた両手の間に俺のそれを挟み、ゆっくりと擦り始める。その度に手の中から卑猥な音が漏れ、俺は堪らずシーツを握りしめた。腰はくねるばかりでハルトからは逃れられない。身体中から汗が噴き出し、その部分に血液が巡ってゆくのを感じた。
「やっ、……あ、あっ……」
 ハルトの手に包み込まれていたそれは、既に握らなくても上を向く形状になっていた。ぬるついた手で揉まれ、濡れ光る先端にハルトの手のひらが被せられ、ぐりぐりと擦られている。

 ──嘘だ、こんなの。
「んっ、あ……。あぁっ!」

 ──こんなに気色悪いのに、こんなに気持ちいいなんて……絶対に嘘だ。