第8話 静かの夜に -4-

「大丈夫か? 重くない?」
 抱き合ったままベッドに倒れ込み、上から蒼汰の体に覆い被さる恰好となってしまった。
「丁度いい感じだな。抱き心地もいいし、風呂上りの匂いもいい」
 俺の体を抱き枕にして、蒼汰が全身でしがみついてくる。密着した胸元から鼓動が伝わってしまうようだ。恥ずかしさと心地好さで上気する頬を蒼汰の首筋に押し付けながら、俺は小さく息をついた。

「まさか父さんにあんなこと言うなんて思ってなかったから、驚いたよ」
「……突発的に言っちまったんだ。武虎が無事でホッとしたのと、親父さんの行動見てたらさ。俺もこんな家で育ってたら……って思ったら、止まんなかった。悪い」
 蒼汰の指が俺の髪に絡み、額に口付けられる。
「いつ言っても父さんなら許してくれてたよ。そういう人だもん」
「武虎から翼を奪った男だぞ?」
「……武虎だって、蒼汰のこと嫌いになった訳じゃない。ただどうしようもない複雑な感情が膨らんで、それこそ突発的だったんだと思うよ」
 蒼汰のことも俺のことも大好きなのに、どっちとも一緒にいたいのに、置いて行かれてしまう気がしたんだろう。

 ……たぶん武虎は、動物園の帰りの電車の中で話していた俺達の会話を聞いていたんだ。
 つばさが先生の所に行っちゃう。先生はおれよりもつばさのことが好きなのかもしれない。
 形容し難い気持ちはどこにも吐き出すことができなくて、誰にも言えなくて、寂しくて、だけど解決法なんて思いつかなくて……自分への無価値感から消えてしまいたくなったんだ。

 見つけることができて良かった。これからきっとまたやり直せる。

「ありがとう、蒼汰」
 俺は呟き、静かに目を閉じた。
「蒼汰に会えて良かった。武虎だけじゃない、俺も蒼汰にたくさん救われた。蒼汰がいてくれて本当に良かったよ」
「……褒められ慣れてねえと、こういう時の対応が困るな」
 噴き出し、俺は伸ばした手で蒼汰の頭を撫でた。
「よく頑張りました」
「……翼もな」
 見つめ合えば距離が縮まり、唇が触れ合う。堪らなくなって蒼汰に抱き付くと、蒼汰が珍しく慌てた様子で俺の肩を引き剥がした。
「駄目だろ、武虎も親父さんもいる」
「寝てるよ、静かにすれば大丈夫」
「でもな」
「……蒼汰とセックスしたいよ」
 ぐ、っと息を飲んだ蒼汰の手が俺の頬に触れ、焦らすようにゆっくりと撫でられた。

「俺のせいで、翼くんが不良になっちまったな」
「したいと思ったことを素直に言っただけ」
 身を起こし、音を立てないようにシャツを脱ぐ。蒼汰の上に跨ったままで今度は蒼汰のシャツを脱がし、その柔らかな筋肉に手のひらを滑らせた。