第7話 武虎の異変 -6-

「武虎は無事だ。必ず帰る、大丈夫だ」
 蒼汰が俺の頬を手のひらで撫でる。その時になって初めて、俺は自分が泣いていることに気付いた。
「だから泣くな。お前がしっかりしないとだろ」
「………」
「あいつは今、お前に一番会いたいはずなんだ」
「……うん」
 蒼汰の厳しい声と眼差しは、すぐに俺の涙を止めてくれた。代わりに熱い気持ちが込み上がってきて、何が何でも、見つかるまで一秒だって休まずに探してやるという気になってくる。

「警察も探してくれてる。駅とバス停では、子供の目撃情報はなかったそうだ」
「武虎は切符の買い方も分からないし、一人で電車もバスも乗れないから」
「あと、公園か。俺達が始めに会ったあの公園も、今手分けして探してる」
「他は──」
 移動するとしたら徒歩しかないから、武虎一人ならそう遠くまでは行けないはずだ。金を持っていないから店にも入れない。腹だって減っているだろうし、案外、どこか見つかりにくい場所で眠りこけているとか、……あるはずだ。

「俺、市の公園の方に行ってみる。広いから、まだ探してない場所もあるかもしれない」
「そうだな、俺も別の場所を探そう。だけど翼、お前も気を付けろよ。危険なことだけはするな」
 蒼汰が俺の頭を撫で、冷たくなった額に唇を押し付ける。
 何故だか心強かった。一人でも一人じゃないという気持ちになれた。蒼汰だけじゃない。みんな、武虎のために全力を尽くしてくれている。

「武虎」
 風も空気も冷たいのに、走れば汗が止まらない。湿った服がすぐに冷えて体中が凍えたが、構わず俺は走り続けた。途中、何度足がもつれて転んだだろう。公園の芝生で、噴水広場で、たった三段しかない階段で。
 額の汗を拭った時、それが汗ではなく雨であることに気付いた。
「武虎ーっ!」
 雨も汗も同じだ。拭ったって拭い切れないなら、気にしてなんかいられない。

 こども広場。野球場。犬の散歩コース。アスレチック広場。テニスコートにプール。何だって、この公園はこんなに広いんだ。
「まだ見つかりませんね。大変申し上げにくいのですが……」
 雨の中、公園内を探していた警官の一人がやって来て、額に手を翳しながら言った。
「連れ去りなどの可能性もあるかもしれません。その場合、相手側から自宅に電話がかかってくるかもしれない。お兄さんは一度家に戻って──」