亜利馬、己との闘い -4-

 シャワーを浴びる気力すらないけど、次があるから浴びないわけにいかない。未だに脚と腰がガクガクしているが、俺はシャワー室の壁に寄りかかってぼんやりと体を洗った。
「亜利馬くん、お疲れ~」
 シャワー室のドアが開き、デジカメを手にしたスタッフが陽気に声をかけてきた。
「つ、疲れたぁ……もう立てない」
「亀頭ローターどうだった?」
「あれマジでヤバいっす……考えた人凄過ぎ」
 多分、オフショットとしてDVDに収められる動画だ。……本当は「何てモン作ってんだマジで」くらい言いたかったけど。
「竜介とも、同じプレイもっかいやる?」
「いやいやいや、無理ですって!」
 嘘だよ~と言って、スタッフがシャワー室のドアを閉めた。
「……ふあぁ」
 再び壁に寄りかかり、あくびのような気だるい溜息をつく。今すぐ眠りたかった。

 椅子の撤去と掃除が終わった後は、同じビル内にある別のスタジオに移動だ。今回のDVDには俺以外の企画モデルも出るということで、あのフロアはまた別のモデルが今度はマットレスを使って凌辱されるとのことだった。
 有難かった。例えばチャプターが五本あるとして、それ全部に俺が出てさっきみたいな衝撃射精をさせられるくらいなら、アルバイトや小遣い稼ぎを理由に来てくれたモデルさんに一、二本くらい請け負ってもらえる方がいい。
 山野さんや潤歩からは「プロ意識が欠けてる」と言われそうだけど、実際あれを味わってしまった俺は今、AVって本当に大変なんだと心から実感している。前に獅琉が二十回イッたと言っていたけど本当なんだろうか。今の俺はもう本当に、今すぐ、とにかく横になってしまいたかった。

「竜介さん、いつ来るんですか……?」
 別スタジオはグレーの壁紙に覆われたお洒落なセットで、ダブルベッドや床、ドアもモノトーンで統一されている。用意されていたパイプ椅子に座って隣の山野さんに訊くと、「あと一時間くらいだな」と返答された。
「一時間も……」
「控室で寝てもいいぞ」
「……あのベッド使ったら駄目ですか?」
「………」
 山野さんが膝の上で開いていたパソコンから、俺に視線を移動させる。
「……う、嘘です」
 仕方なく俺は立ち上がり、予定より早くユージさんの待つ控室へ行って仮眠を取ることにした。

「すいませんユージさん、ちょっと寝かせてもらってもいいですか」
 有難いことにメイクルーム兼控室には大きなソファがあり、俺は入って早々倒れ込むようにしてソファへ体を横たえた。
「お疲れ様。ヘアメの時間になったら起こすね」
「お願いします……」
 タチでもウケでも体力勝負なんだな、と思う。今日はこの後で竜介との絡みを撮って、明日は一日かけてジャケットの撮影をして、……まだまだやることはたくさんある。

「………」
「おやすみ、亜利馬くん」