#9 マカロのたいへんないちにち

 夢魔印の眼鏡。ステッカー。香水に、赤ちゃんパンツ──。

「あー、うー。どれも違う!」
「マカ、どうしたんだ? 頭抱えて」
「炎樽……」
 俺は炎樽の部屋で床に並べた夢魔グッズを前に、心底から悩みに悩んでいた。
「母さんがビーフシチュー作ったって。早く下りて来いよ」
「炎樽。学校の文化祭ってやつ、俺も付いてっていいって言ってたよな?」
「ん? ああ、別にいいけど。文化祭なら私服でも紛れ込めるし」
 文化祭。正しくは帳が丘学園中・高等部学園祭。これは学校の生徒たちが模擬店を出してワイワイ賑わう楽しいお祭り。この日は勉強もしないで、弁当も買わずに、一日自由に遊んで過ごすのだそうだ。
 話を聞いているだけでわくわくして、サバラが参加するなら俺もやりたいと言ったら炎樽が快くオッケーサインを出してくれた。

 たこ焼きと焼きそばにイカ焼きと、クレープ。アイスにワッフル、ドーナツ。俺の好物がたくさんあると聞いて、今からお菓子を我慢しているほど楽しみにしているのだ。

 しかし──
「昼休みがないなら、いつ男達が炎樽を追いかけるか分かんないじゃん。天和とセックスして匂いが弱まってるって言っても、完全に消えた訳じゃねえもん」
「マカ、俺のために悩んでくれてるんだ。でもそれならほら、体育祭で借りたパンツをまた穿いてもいいしさ」
「これは使い切りだからもう使えないよ。新しく注文すると時間かかって間に合わない」
「……そっか、夢魔印の商品って使い捨てが多いもんな」
「うーん。まだ少し日にちあるし、サバラと相談してまた考えておくよ。……それより炎樽の所は、何のお店やるんだ?」
「俺のクラスはエッグタルトを売るんだってさ。学校の近くに店があって、そこから卸すらしい」

 エッグタルト。黄色くてサクサクでふわふわの、ほっぺたが落ちるほど甘い甘いスイーツ。俺は想像して口いっぱいに涎を溜めながら、炎樽に縋りついた。
「お、俺もたくさん食べていいのかっ? エッグタルト、俺も食いたい!」
「いいけど、三つまでな。数に限りがあるんだから」
「やった!」
 俺の任務は学園祭当日、炎樽を男達から守ること。何があっても指一本触れさせないこと。その報酬がエッグタルトを始めとしたスイーツだ。

「でも、天和もいるからそんなに気張らなくていいと思うぞ。あいつ多分何もやらないから暇だろうし」
「これは天和からの依頼でもあるんだ。当日、邪魔されずに炎樽と学校デートできるようにって」
「あいつ、またくだらないこと頼んで……」
 炎樽が苦笑して部屋を出て行った。
「まあ何でもいいから、早く来いよ。シチュー冷めちゃうぞ」

 炎樽と天和の平穏なデートのため、そして何よりエッグタルトのため。
「よし!」
 俺は気合を入れて拳を握り、スマホを出して夢魔印の通販サイトを開いた。