#8 男子高校生の夏休み -2-

 そんな訳で、七月二十日。

 俺達はサバラの運転する車で地元を飛び出し、県を越えて緑あふれる海沿いの町の別荘へと辿り着いた……のだけれど。
「サバラが格安で買った別荘って、これ?」
「ああ、そうだが。文句あるか?」
 四人で見上げたその家は、今にも朽ち果てそうな洋風お化け屋敷だった。一体何十年前に建てられたのだろう。白い木製の壁に赤い屋根で、当時はそれなりにオシャレで綺麗だったかもしれないが、とにかく今は心霊スポットにしか見えない。

「………」
 沈黙する俺達三人を見て、サバラがむくれたように腕組みをした。
「文句がある奴は野宿だ。雨風しのげるだけ有難いと思え」
「雨降ってないし……」
「まぁ、仕方ねえだろう。来ちまったモンは」
 天和が車から荷物を下ろすのを見て、俺もそれを手伝った。今から宿を取るにしても夏休み中でどこもいっぱいだろうし、何より「別荘に泊まる」という皆のテンションが台無しになってしまう。
 ここは無理にでも盛り上げないと。
「で、でもさあ! ボロくてもレトロな感じだし、海も近いし、中は掃除すれば綺麗になるよな! 庭も広いからバーベキューもできるじゃん!」
「炎樽くん、ありがとう……さりげなくボロいって言われたけど」
「掃除しよ、全員で手分けすれば早く終わる!」

 運よく倉庫にあったモップとバケツを手にしながら、俺は目の前のデカい別荘を見上げてごくりと息を飲んだ。……果たして、一日で終わるだろうか。
「炎樽。俺、頑張るからさ。ちゃっちゃと終わらせて遊ぼうぜ!」
「マカ、何か夢魔印の掃除用具とかないのか? 一瞬で掃除を終わらせられるようなやつ」
「ご、ごめん……そういうのはないかも」
「いや、いいんだ。頑張ろう」
 そうして夏休み第一日目の大掃除が始まった。
 汲んできた水を床にぶちまけ、デッキブラシでごしごしと擦る。テーブルや椅子を外に運んで丁寧に水拭きする。窓ガラスを洗剤を使って拭き、溜まった埃をほうきでかき出す。
 この暑い中休むことなく働く俺達は全員、滝のような汗を流していた。

「暑いー!」
 一番最初にギブアップしたのはマカロだ。いつもの黒い服が太陽光を受けて更に熱くなっているらしく、止まる間もなくぽんぽんと脱ぎ始める。
「パンツ一丁マン、登場!」
「ガキか……」
 ぎゃははと笑いながら、下着一枚になったマカロがホースの水を俺に向けて噴射させた。
「わっ、やめろ、マカ!」
「炎樽も脱げ! 気持ちいいぞ!」
「お、俺はいいから!」
 天和とサバラも早々に上半身裸になっている。町から離れた場所ではあるけれど、時折近くの通りを走る車の中で俺達を笑っている人がいると思うと少し恥ずかしかった。
 結局マカロにびしょ濡れにされて、俺もシャツを脱ぐ羽目にはなったが……これはこれでまあ、恥ずかしささえ気にしなければ良い思い出になるだろう。

「サバラ、部屋は二つあるんだろうな」
「もちろんあるさ。鍵はかからないけどね」
 頭にタオルを巻いた天和が、モップを手にサバラを睨みつける。
「……まぁ、マカと約束したからな」
「え、何を?」
「あんたには教えねえ」