#5 エロス&インテリジェンス -12-

「う、うわっ、うわぁっ! どうしよう天和、見つかった!」
「そんな慌てることねえだろ。俺がいるんだしよ」
「そうだけどもう、あいつら見てるだけで怖いんだってば!」
 何言ってんだお前、と天和には言われてしまったが。
「捕まえろ!」
「犯せ!」
 全裸の原始人のような集団が迫りくる中、俺は天和を見上げて訴えた。
「と、とにかく誰もいない場所がいい! 天和!」
 天和が俺の腕を握り直し、頷く。
「来い、炎樽!」

 そうして俺達は走り出した。一年校舎を抜けて中庭に出て、園芸部が丹精した花壇の前を駆け抜け、二年校舎に入り、廊下を走るなと教師に言われ、それでも階段を駆け上がって三階へ行き、輝く汗を飛ばしながら……
 まるで、町の悪者に絡まれていたところを若者に助け出されたお嬢様のような気分だ。俺以外の全員が素っ裸なのは置いておくとして、なかなかに劇的なシチュエーション。
 こうして天和に助けてもらうのも何度目だろう。始めはセクハラ好きで遊び人で暴力的な不良のイメージしかなかったのに、今は秘密の共有をしているせいかこの学園で誰よりも頼もしく思える。

「ここなら誰も来ねえだろ。奴らもまいたみてえだし」
 屋上は基本立ち入り禁止でさほど面白味もないため、漫画のように不良の溜まり場にはなっていない。隠れられるような壁もなく喫煙場所にも向いていないせいだ。
 だだっ広いコンクリートと青空が広がるだけの、静かな空間。天和がマカロを地面に降ろすと、スマホを抱えるようにしてマカロがゲームを再開させた。保健室を出た時はMサイズのぬいぐるみのようだったマカロは、今やSサイズになっている。
「マカ、大丈夫か?」
「あと少しでボス手前。流石に攻略が難しくなってきてる……」
 三人で円を作って座り、とにかく今はゲームクリアに集中する。

「ちょっと苦しい……」
「マカ!」
 魔力を使い切ってしまったのか、マカロの小さな手からスマホが落ちた。慌ててその体を抱き上げ、少しでも落ち着くようにと背中をさすってやる。
「ありがとうな、マカ。後は自分で何とかするから。ゆっくり休んでくれ。ありがとう」
「ほたる、がんばって……」
 マカロを膝に寝かせたまま、熱くなった端末を手に取る。残機は1。ノーコンティニューの初見でラスボスのシャックスを倒さなければならない。

「………」
 もしもこれで負けてしまったらどうなるんだろう。ラストステージの始めからやり直しなのか、それともスタートまで飛ばされるのか。
 マカロの頑張りを無駄にする訳にいかない。ここまできたら絶対に一発クリアだ。
 ……もたついてる暇はないと分かっているのに、プレッシャーのせいか手の震えが止まらない。

「俺にやらせてみろ、炎樽」
「えっ!」
 天和が俺の手からスマホを奪い、画面に視線を落とした。
「だ、駄目だって。今度は天和の視力が奪われる!」
「クリアすれば問題ねえんだろ」
「でもお前、ゲームなんか興味ないって……!」
「お前を救うためなら話は別だ」