#5 エロス&インテリジェンス -10-

 今では魔力を消費しすぎて、マカロは子供どころかぬいぐるみのようなサイズになっている。その小さな手でのゲーム操作は相当大変そうだが、万が一誰かに見られてもこうして抱えていれば、キャラクターのぬいぐるみと思ってもらえるかもしれない。
「ほたる、揺らさないで」
「ご、ごめん」

 愛らしく整った顔の、アイドルみたいな一年生たち。きゃっきゃと騒ぎながら全裸で廊下を歩いているその姿は、まるで絵画の中の天使の子供みたいだ。幸いにも俺のゾーンには入らないタイプだから、まだこうして落ち着いていられるけれど……
「ここでもし彰良先輩と遭遇したら、今度こそ鼻血噴くだろうな……」
「ほたる、あと1ステージでラスボス面だぞ!」
「ほ、ほんとか! マカ、凄い!」

 とにかく人が来ない所へ。全裸の生徒達の間を縫うようにして通り抜け、何処か良い場所がないかと辺りを見回す。──結局、今日も昼飯は食べられそうにない。

「あっ、可愛い!」
 丁度すれ違った一年生の集団が俺を振り返って言った。
「先輩、その人形何ていうやつですか?」
「え? こ、これのことか?」
 胸に抱いたマカロは無言でゲームに集中している。一年生たちからは画面が見えてないせいで、変わったデカめのスマホアクセサリーと思われているらしい……が、このままだとマカロが生き物だとバレてしまう可能性の方が高い。

 ──いや、そんなことよりも。

「わ、可愛い。こういうキャラクター好き」
「バンドのグッズみたい。羽と尻尾が悪魔っぽいし」
「いいな。先輩、どこで買ったんですか?」
「あ、いや、……その、……」
 素っ裸の一年生たちに囲まれ、ぐいぐいと迫られ、俺はその迫力につい後ずさってしまった。年下は好みではないといえど、手入れされた艶々の肌は彰良先輩のそれと同じくらい眩しい。というかこの一年達、下の毛も手入れしてるのか……
「先輩っ」
「先輩、先輩っ」
「や、やめろ……くるなっ……」
 じりじりと悪意のない彼らが距離をつめてくる。マカロはちゃんと無反応を決めてくれているが、こういう時にこそ「透明の香水」でも出してくれたらいいのに。

「何やってんだ、お前ら!」
「えっ……」
 廊下の奥から駆けてきた全裸の男を目にした瞬間、俺は危うく卒倒しそうになった。
「あっ! 天和先輩だ!」
「天和先輩!」
「先輩先輩っ、お昼ご飯一緒に食べませんかっ?」
 手のひらを返したかのように、目の色を変えて天和に群がって行く一年生たち。彼らも天和も全裸なせいか、見てはいけないものを見ているようで顔が真っ赤になってしまう。

「炎樽? 何してんだお前!」
 俺が堂々とマカロを抱いているのを見て、天和が目を丸くさせている。それから群がってきた一年達をかき分けるようにしてこちらへ来て、眼鏡をかけた俺をじっと見つめ──
「なるほどな。なかなかエロいじゃねえか」
 悪巧みを企む鬼の顔で、ニヤリと笑った。