#5 エロス&インテリジェンス -9-

「今回は被害者も少ないだろうけど、他のユーザーの為にも攻略サイトを作ってあげたらいいんじゃない?」
 面倒だけど、真相を知っている俺にしかできないことだ。これ以上の被害者を出さないようにゲームそのものを抹消したいけれど、サバラ曰くそれは時間の問題らしい。悪徳業者と同じように、目的の物を回収できるだけしたらさっさと姿を消すからだそうだ。

「だけどいきなりトンズラされたら、クリアできなかった被害者の視力は戻らないんじゃないのか?」
「ゲームにかかってる呪いがどの程度か分からないけど……。多分、今回のは向こうも遊び心でやってることだと思うからそれはないんじゃないかな。救済処置として、呪いを解除したゲームだけポツンと残るのかもね。とにかくクリアできればいいんだよ」
「奪った視力も結果的に全部元に戻されるなら、ますます何のためにやってるんだか」
「試作段階のテストみたいなモンなんじゃないかな。炎樽くん含め運悪く波長が合ってゲームを見つけちゃった人間が、勝手にテストプレイヤーにされてるんだよ」

 めちゃくちゃ迷惑な話だ。俺にはたまたまマカロやサバラのような味方がいたから対処できたけど、一般のプレイヤーは恐らく原因も知らずに泣き寝入りするしかないじゃないか。
「……攻略サイト作って、絶対に全プレイヤーの呪いを解いてやる」
 決意を固めたその時、四時限目終了のチャイムが鳴った。

「……昼休みだね。結界を張ったらマカロの防御魔力も発動しなくなっちゃうけど、どうする?」
 どこか楽しそうにサバラが言って、俺は眉間に皺を寄せながらしぶしぶ眼鏡をかけた。

「マカ、他の生徒が来るかもしれないからどこか別の場所に移動しよう」
「んー、あとちょっとだけ……」
 うつ伏せになってゲームをやりながら、短い足をぶらつかせるマカロ。取り敢えずベッドに散らばったお菓子の残骸を片付けてからもう一度声をかけると、再び「あとちょっとだから」と言われた。俺のためにやってくれていることは分かっているが、いつ生徒が来るとも限らない。子供にゲームを止めさせたい親の気分だ。
「そんな恰好で転がってゲームしてたら風邪ひくぞ」
「おれ、服着てるよ」
「あ、そうか……。もう、面倒臭せぇ眼鏡だな!」

 ゲームを操作し続けるマカロを抱えて、保健室のドアからそっと廊下へ出る。昼休みのくだけた風景の中で生徒は全員全裸だけど、ここが一年校舎だからか、近くに三年生はいないみたいだ。