#5 エロス&インテリジェンス -8-

「ええ? 勿体ない、せっかく買ったのに!」
 サバラは本気で驚いている。俺がこの機能を無条件で喜ぶと信じ込んでいたらしい。
「さっきは顔真っ赤にさせて、彰良くんのこと凝視してたじゃないか?」
「そ、そりゃあ彰良先輩レベルの芸術品なら、つい見ちゃうけど……。クラス全員が全裸っていうのはエロいどころかめちゃくちゃ不気味だし、何より講師のおじさんの裸なんて見たくないんだよ」
「うーん。まだまだ改良の余地があるね。特定の人だけに対象を絞って効果が出るようにすればいいのか……」
「俺は使用感のレビューをしてる訳じゃないんだって!」

 眼鏡を外すと、途端に視界がぼやけ始めた。それでも男の裸を見続けるよりはこの方がましだ。
「透け透けになる効果は最後にボタンを押してから約一時間だから、放っておけば自動的に解除されるんだけどね。丸一日経てば眼鏡としての機能もなくなってただの伊達眼鏡になるから、買い直さない限り永久的に使うこともできないし」
「さっき俺連打しちゃったよ……」
 とにかくマカロのプレイに期待するしかない。ラスボス手前まで魔力が持つことを祈るしかない。
 俺はぼやけた視界の中で恐る恐る紅茶のカップを取り、少し冷めたハーブティーを少しずつ飲んだ。

 悪魔の存在なんて、信じる・信じない以前に考えたことすらなかったけれど……想像よりもずっと人間にとって身近な存在になっているとマカロに聞いた時は、背筋がぞっとした。「近年目を覆いたくなるような恐ろしい犯罪が多発している」とよくワイドショーでやっているけれど、もしかしたらそれも悪魔が干渉しているせいなのだろうか。

 悪魔にとって人間を思い通りに動かすなんて簡単そうだし、もしかしたら犯罪事件以外にも世間の流行や株式などを操作しているのかもしれない。長い年月をかけて少しずつ、この世界は乗っ取られているのかも。
「……悪魔を倒す正義の味方とか、ヒーローみたいなのが生まれればいいのに」
 何気なく呟くと、目の前に座っているサバラが笑い声をあげた。

「悪魔だって、炎樽くんが思ってるほど悪い奴じゃないんだよ。というか、悪魔には悪魔のルールがあるから好き勝手にはできない、って言った方が正しいかな。俺もマカロもその気になればいつでもこの学校中の種を集められるのに、そうしないだろ」
「マカロとサバラにも種集めのルールがあるってこと?」
「そう、色々ね。例えば『相手の人間の合意がなければ無理矢理奪うことはできない』とかさ。夢魔にとってレイプは処刑レベルのタブーなんだ」
「なるほどなぁ……」

「シャックスのゲームだって、何かルールがあったはずだよ。炎樽くん、新しいアプリゲームの利用規約なんて読まないだろ。そこに書いてあったんじゃないかな。『このゲームは視力が奪われる可能性がありますよ』って。大手のゲーム会社でこんなことしたら一発でバレるし大混乱になるから、無名の所でやってるんだろうね」
「いつの間にか課金される悪徳システムみたいだな」