#5 エロス&インテリジェンス -6-

「砂原先生。俺はそういうの気にしませんから、あまり炎樽くんをいじめないであげてくださいね」
 くすくすと笑って、彰良先輩が柔らかく目を細めた。心から癒されるその笑顔、俺の無垢な慈愛の天使。窓から降り注ぐ昼の日差しが、その頭にきらめく天使の輪を作っている。

 ──綺麗だなぁ。
 細いのにしっかりとした首、なだらかに盛り上がった胸板。薄く陰影を作る腹筋。形の良いヘソと腰のライン、その白い肌に相応しい薄桃色の乳首……。
「………」
 立てた膝から伸びる綺麗な脛。足のつま先まで美しく、太股は真っ白で柔らかそうで、思わず唾を飲んでしまう。

「よし。ガーゼもあてたし、これで大丈夫。痛くなかったかい、彰良くん」
「は、はい……ありがとうございます」
 サバラが彰良先輩の顎に指を添え、「良い子だったね」と囁いた。怒りと嫉妬で俺の顔は真っ赤になってしまう。
「そ、それじゃあ俺は授業に戻ります。炎樽くん、お大事にね」
「っ……!」
 立ち上がった彰良先輩が俺の前に立った瞬間、俺の股間に熱いものが走った。一糸まとわぬ姿の彰良先輩がにこやかに笑い、俺を見つめている。
「あ、あ……」
「炎樽くん?」

 駄目だ。これ以上直視していたら鼻血が出る。白い肌は眩しく神々しさすら感じるのに、モザイク無し無修正というだけで途端に天使が卑猥なものになってしまう……。
 ミケランジェロのダヴィデ像もきっと、真っ白の石膏だから「美」として見られるんだろうなと思った。あれがフルカラーの実写版だったらとても世界史の資料集に載せられない。
 そして今俺の目の前に存在しているのは実写版のダヴィデだ。美しさと卑猥さが俺の中で拮抗し合って、結果的に混ざり合ってもう、何だかもう、とにかく……
「──ありがとうございますッ!」
 拳を握って叫ぶと、サバラが「ぶっ」と噴き出した。

 保健室を出て行く彰良先輩の美しい尻が見えなくなったところで、改めてサバラに向き直る。
「……そういう訳で。どうしてくれるんだよ、これ」
「何怒ってるんだい、充分一人で楽しんでたみたいじゃないか?」
「ち、違うっ。今のはたまたま彰良先輩がいただけで……! それよりサバラ、あんな手当てのやり方してたらセクハラで訴えられるからな!」
「退屈な仕事してやってるんだから、これくらいの見返りがないとやる気も出ないよ」
 この時点で俺の目にはサバラも全裸で映っている。いつもの俺ならその整った裸体に慌てていただろうけれど、今は怒りと彰良先輩の美の印象が強烈過ぎてサバラには何の感情も沸かない。