#4 ナイトメア・トラップ -9-

 ニコニコと笑うマカロとは正反対に、サバラは仏頂面で俺達を睨んでいる。こうして並んでいるのを見ると、白衣にスーツなのもあって流石にサバラの方がお兄さんぽい。幼馴染というか兄弟みたいだ。

「サバラ。こっちのいい匂いするのが炎樽。俺が先に見つけて契約してるから、絶対、何があっても、手出したら駄目だぞ」
「……分かってる」
 続いてマカロが天和を指して言った。
「で、こっちが炎樽の騎士・天和。既に知ってると思うけど怒らせたら怖いから、天和にも手出したら駄目だ。ちなみに天和は、炎樽に何かあってもキレるから気を付けろよ」
「……よく分かってる」
 サバラの天和を見る目は怒っているというよりもビビっている感じで、よく見れば眉毛がヒクヒクと痙攣していた。

「でも、夢魔が保健室の先生っていうのはどうなんだろ? 倫理的に大丈夫?」
 もしかして美しい顔に惹かれてやってきた無垢な男子生徒が、どんどんサバラの犠牲になるのでは――という、そんな俺の予感を察知したのかマカロが「大丈夫!」とサバラの肩に腕を回して言った。
「こう見えてサバラは治癒能力も持ってるし、人間の世界に来るのも初めてじゃないから俺よりも色々知ってるし慣れてるんだ」
「知ってるし慣れてるって、どういうことだ」

 天和が疑いの目付きで睨むと、焦りながらもかろうじて夢魔としてのプライドを保ちつつサバラがそれに答えた。
「ふん。お前達の所にも金で種のやり取りをする、風俗……売り専とかいう店があるだろう。あれは俺達夢魔の世界にあるシステムの模倣だがな」
「どうでもいいことを偉そうに何言ってんだお前」
「お、俺を馬鹿にするなと言っただろう!」

 ともあれ、むやみに学園の生徒には手を出さないと約束してくれたサバラ。しかし種集めという目的があるのに、この二人の夢魔はどうして学校という不自由な場所で活動することを決めたのだろう。言われてみれば、もっと動きやすい場所があるというのに。
「お前ら、いっそ風俗で働いた方が手っ取り早いんじゃないのか」
 敢えて黙っていたことを天和がずばり切り出した。

「違うぜ天和」
 それに対し、マカロが若干照れながら反論する。
「サバラはともかく、俺は新しい目標として『極上の種』を求めることにしたんだ。その辺に転がってる普通の種とは段違いの、最強の種をな!」
「何だ最強の種って」
「ふふん。それはすなわち、強く愛し合う者同士から生み出された種!」
 マカロが俺と天和に向かって両手を伸ばし、それぞれの肩に片方ずつ手を置いて言った。その目はきらきらと輝いている。
「だから早く二人が合体できるように、俺もこれから頑張るぞ!」
「は、はぁ?」
「へえ」