金と黒 -7-

 ……旦那様の薔薇園でこんなことをするなんて、少し後ろめたいけれど。
「ひ、飛凰様……服は自分で脱ぎますから」
 ベッドではなく、今朝二人で座っていたカントリー風のベンチの上。こんな開けた場所で薔薇に囲まれた中、飛凰に一枚ずつ服を脱がされるなんて恥ずかしくて仕方ない。
「俺の要望は聞いてくれないのか?」
「……あ……」
 ――無理難題を押し付けろと言っていたくせに、結局自分のしたいことを優先させるんだなぁ。

 苦笑する俺の首筋にキスを繰り返しながら、飛凰がシャツからネクタイを抜く。ボタンを外され、ベルトを外され、少しずつ飛凰の下で肌があらわになって行く。後ろめたくて恥ずかしいけれど、やっぱり飛凰の愛撫を受けられると思うと自然に体が熱くなってしまった。
「綺麗だぞ陽太。桃色の花びらのようだ」
「……は、恥ずかしいです……あっ」
 俺の乳首を優しく摘まんで、飛凰が唇を寄せてきた。吐息までもが薔薇の香りだ。頭の中がくらくらする。

「んあっ、……あ……」
 背中に受ける冷たいベンチの感触すら気持ち良くて、俺は真上から覆い被さる飛凰の髪を揉みながら喉を反らせた。甘い香りと極上の刺激が俺の体を包み込み、訳も分からず切なさがこみ上げてくる。
「飛凰様っ、あぁ……!」
「やはりだ、お前は黄色い薔薇が似合う」
「あ、……あ」
 丁度俺の頭の後ろ側で揺れている薔薇と、体を開いて目を潤ませる俺と、飛凰の視界にはそれらが同時に映っているのだろう。俺なんかに勿体ないという恥ずかしさから、つい視線を横に逸らしてしまった。

 飛凰が俺の耳に悪戯っぽく囁く。
「黄色い薔薇の花言葉は、嫉妬。不貞。薄れゆく愛。あまり良いものがない」
「さ、散々じゃないですか……」
「しかし、変化。美しさ。愛の告白、というものもある」
「それじゃあ贈られた方は……嫉妬されてるのか告白されたのか、分からないですね」
「人によってどうとでもとれるということだ」
 飛凰が気に入ってくれたなら、飛凰が似合うと言ってくれるなら、俺は素直に花言葉よりも彼の言葉を受け入れよう。
 俺達金魚が信じるのは、主の言葉だけ。黒羽が無条件で飛龍の愛を信じているように。
「飛凰様、それよりも早く……欲しいです」
 俺もこの世でただ一人、生涯飛凰だけを愛して生きて行きたい。

「――あぁっ! あ、飛凰様っ、……!」
「お前が欲しい物は全て与えると約束するよ、陽太」
「飛凰、様……俺はもう、全て……手に入れてますっ、……あっ……」
 汗に濡れた肌。ぶつかり合う音。俺の中を激しく愛撫する飛凰の雄の証。今の俺がこれ以上何を欲しがればいいというのか――。