金と黒 -4-

「はあ、取り敢えずは上手くやっているみたいだな。安心した」
 お茶が終わって飛龍と飛凰が屋敷の中へ入って行ったが、俺と黒羽は庭に残って金魚同士水入らずの話をすることにした。
 相変わらず整った綺麗な顔立ち。同じ金魚になって初めて分かったが、黒羽には「上品な」美しさというものがある。決してそれを主張せずわざと控えめに在ることで、傍らに立つ主人の貫禄というかオーラみたいなものをより一層際立たせているのだ。
 前に屋敷に来た琥珀とは全く違う、本物の美。凛としたその横顔からは、第一金魚の誇りが垣間見える。

「黒羽さんにはまだまだ及びませんし、飛凰様の役に立ててるかは分かりませんが……俺は、俺なりにやって行こうと決めました。金魚になる前に黒羽さんが仰っていた『自分を磨く』っていうのが、最近になってほんの少しだけ理解できたと思うんです」
「以前会った時とは人が変わったようだな。そんなに謙虚な男じゃないだろ、お前は」
 思わず噴き出してしまった。黒羽もくすくすと笑っている。

「霙さんや桃矢さんは元気ですか?」
「相変わらず喧しくやってるよ。昨日は旦那様の夜の相手をどちらがするかでケンカをしていた」
「えぇっ、……それで、旦那様は結局どっちを選んだんですか?」
「両方を寝室に呼ばれていた」
 項垂れる黒羽の顔には苦労の色が浮かんでいた。
 黒羽には申し訳ないがこちらは俺一人で本当に良かったと思う。もし飛凰にも第二、第三金魚がいたら、毎晩血で血を洗うバトルが繰り広げられていただろう。

「旦那様って、あのお年で物凄い体力ですね……」
「出会った頃からそこだけは全く変わっていないな。陽太も気を付けろよ。飛凰様がお年を召してから若い金魚を迎えたいと言い始めたら、やんわりと宥めた方がいい。第一金魚は気苦労が増えるだけだからな」
「本当に大変そうです」
 三人の金魚に対して旦那様の愛情は三分割ではなく、三倍。それでもやっぱり自分以外の誰かを抱く旦那様を想いながら一人で寝る夜は、きついだろうな。
 俺だったら嫉妬で泣いてしまうし、ライバルである他の金魚と仲良く暮らすなんて……ましてや金魚のまとめ役なんてできそうにない。

「……あの、良かったら黒羽さんと旦那様の出会いとかって聞いてもいいですか? 俺の方も話しますので」
 エステで景虎にスカウトされたこと。すなわち俺と飛凰の出会いは全くの偶然。エステ出身であることを、信頼できる黒羽になら打ち明けても良いと思った。
「俺、知りたいんです。黒羽さんがどうして旦那様を好きになったのか」
「あまり期待できるような話ではないが……」
 そう前置きをして、黒羽が話し始めた。