ご主人様のお仕事 -3-

「はっ、あ……! あぁっ!」
 背後から打ち付けられる飛凰の腰。俗にいう立ちバックに近い体位。俺は透明のベッドにしがみつきながら、ビニール越しに見える海底の景色を潤んだ目で見つめていた。
「陽太……」
「飛凰様っ……!」
 気泡が浮かんでは消えて行く。美しい魚が躍り、海藻が妖艶に揺らめいている。裸で海の中に飛び込んだ俺達は二人だけの世界で何度も繋がり、名前を呼び合い、口付け合った。

「どうだ、気に入ったか? 陽太……」
「はい──とてもっ、……あっ、あ……飛凰様──どぅわあぁぁっ!」
「ど、どうしたっ?」
 甘いひと時に滲んだ熱い汗が、一瞬にして冷や汗に変わる。
 透明のベッド越しに映る深海の中、俺の目の前を巨大なサメが横切ったからだ。
「ひ、飛凰様……今、サメが……」
「映像だろ、気にするな」
「気になりますっ……て、……あっ、あん……」
 すぐさま飛凰が腰を動かし始め、俺もまたそちらに意識を持って行かれてしまう。が──

「ぎょええぇ──っ!」
「ひ、陽太っ?」
 さっきのサメが今度は、馬鹿デカい口を開けて俺の方へ突進してきたのだ。びっしりと並んだギザギザの歯と、地獄に繋がっているかのような真っ黒い喉の奥。それが俺の顔面すれすれまで迫り、Uターンして行ったのだった。

「飛凰様、ちょっとこのままでは集中できそうになくて……。え、映像を変えましょう!」
「気になるなら目を閉じていればいい。ここまできて中断はできないぞ」
「そ、そうですね。目を瞑ってれば何とか……」
 言われた通りに目を閉じ、再び背後の飛凰に集中する。ほら、こうしていればまた快楽と甘い愛撫に体が反応し──ない。
「………」
 むしろ、目を閉じていた方が余計に怖かった。深海のやけにリアルなサウンドが俺の聴覚を刺激し、俺のお得意の妄想で「ヤツ」がどこにいるのか頭の中に映像が浮かんでしまう。

「ああ、駄目だ……怖い……」
「そんなに言うなら体をこちらに向けろ。俺の顔を見ていれば気が紛れるだろう」
 そうさせてもらって、俺は飛凰の方へ体ごと向き直った。
「はぁ……こっちの景色は楽園です」
 汗に濡れた色っぽい肌と銀色の髪。抱きしめるなら鮫肌よりも、陶器のように美しいこの体の方がずっと良い。
「こちら向きだと、少しやりにくいな……」
「ベッドの角度を戻しましょうか?」
「いいさ。陽太が脚を大きく開いてくれればな」
「あ、……」
 俺は銀色の髪に指を絡めて飛凰を抱きしめ、少し変わった正常位で貫かれる感覚に頬を赤く染めた。

「あっ、あ……飛凰様、もっと……!」
 飛凰が俺の耳元で笑う。
「背後からとは、また締め付け具合が変わるな。……陽太、すぐに果ててしまいそうだ」
「あん──あああぁぁッ!」
「陽太っ?」
 またしてもアイツが、今度は飛凰の背後から口を開けて現れた。そのせいで驚いた俺はそこを思い切り締め付けてしまい……
「くっ、……」
 結果、飛凰をイかせることとなったのだった。