陽太のお迎え日 -4-

 深夜零時──

「陽太」
「………」
 七日目の夜の、最後の客。俺は風呂に入って念入りに体を洗ってから、再び着せてもらった着物姿で飛凰を迎えた。
「お待ちしておりました、飛凰様」
「ああ、……綺麗だ、陽太」
 月明りが優しく差し込む部屋の窓辺で、俺達は互いを強く抱きしめ合う。今日初めて顔を合わせる飛凰は昨日までと変わらず穏やかで、そして美しかった。

「この俺を飛凰様の金魚として迎えて下さり、ありがとうございます」
「礼を言うのは俺の方だ。来てくれたのがお前で本当に良かったと思っている」
 遊び人なのにどこか抜けていて、危なっかしい俺のご主人様。
 ──大丈夫。貴方を貶めるようなことはいたしません。

「これから色々と苦労をかけると思うが、何かあればすぐに俺に言うんだぞ。お前に我慢させたくない」
「俺も」
 飛凰の肩に両腕を回し、ゆっくりと引き寄せる。
「俺も飛凰様に我慢させたくありません。どうぞ、今夜は俺をお好きになさって下さい」
 七日目の夜に飛凰と契り、その瞬間から俺は飛凰の正式な金魚となる。初めてのセックスが怖くない訳ではないが、避けて通れない道なら挑むしかない。

「陽太……」
 抱き合ったままベッドに倒れ、俺達は少しだけ視線を繋げてから小さく笑い合った。
 剥き出しの肩に口付けられ、そのまま首筋に何度もキスをされる。初夜の愛撫はとろけるように心地好く、これまで体に刻み込まれた飛凰の唇や指、そして舌が……瞬時にして俺を熱くさせる。
「あ、あ……」
 元々大きく開いていた着物の衿元を更に割られ、露出した乳首を強く啄まれる。あの優しさが嘘のように、今夜の飛凰はまるで獣みたいな激しさで俺を貪っている。もっとして欲しい。もっと、その男らしさで俺を蹂躙して欲しい。どうせなら飛凰無しじゃいられないほど俺を快楽で縛って欲しい。
 俺が飛凰の傍にいたいと思う理由を、今は一つでも多く与えて欲しい──。

「はぁっ、あ……飛凰様っ、……!」
「日に日に感度が良くなっているな。まだ乳首にしか触れていないぞ」
「飛凰様、……い、意地悪しないで下さい……」
「そんなつもりはないが?」
 俺を見下ろす飛凰の目の鋭さは、飛龍が桃矢に向けていたものと似ていた。心の奥底までを丸裸にするかのような目付き。だけど、飛凰のそれはまだ温かみが感じられる。

「飛凰様、ご存じと思いますが……金魚の正装は、下の方が……飛凰様の好みになっているかと」
「そうなのか? 知らなかったぞ、これは楽しみだ」
 飛凰の手が俺の膝を割り、ゆっくりと上に押し上げられる。内股の柔らかいところを這い、更に上へと……
「あっ……」
「なるほど、何も穿いていないのか。それは確かに俺好みだな」
 恥ずかしいほど大きく脚を広げられ、足袋に包まれたつま先が宙で反り返る。飛凰のために着せられた着物がこうして飛凰の手で乱されて行くというのは、何だかおかしな快感だった。
「どうして欲しい。好きなように虐めてやるぞ」