陽太の一歩 -7-

「……飛凰様は、人が好過ぎです。少しは疑うことも学ばれた方が」
「俺を騙しているのか、陽太?」
「……どうでしょうか」
「お前になら騙されてもいいさ。人間不信にはなりそうだがな」
 この天然で素直な性格がもしも飛凰の演技だとしたら、俺の方こそ人間不信になりそうだ。

 俺は飛凰の前髪を撫でながら、枕元の壁に施された巨大な水槽を見つめた。優雅に泳ぐ赤い金魚達。俺は大勢いるこの金魚のうちのどれでもない。
 俺は飛凰のゴールデンコメット。この世にただ一人、飛凰のためだけに生きる金魚。
 そんな自覚はまだ持てないけれど、この人になら付いて行っても後悔しない……かもしれない。

「………」
「陽太。お前は優しいな」
「え?」
「本当は顔を腫らしたお前を俺が慰めるべきなのに、逆にお前がこうして俺を甘やかしている」
「飛凰様に甘えられるなら、大歓迎ですよ」
 ふふ、と飛凰が笑って寝返りをうち、顔を俺の体の方へと向けた。
「もう少し甘えてもいいか?」
「え? はい、もちろん……って、ええっ?」
 その白い指が俺のズボンのボタンにかかり、ファスナーを下ろす。強引に中からそれを出され、俺は顔を赤くさせながら唇を噛んだ。

「誰かにこうされたことは?」
「あ、ありません……」
「それなら、口淫も初めてだな?」
「こ、ういんって……?」
 萎えた俺のそれに、ゆっくりと飛凰の唇が近付けられる。まさか、そんな……く、口で?
「──あっ!」
 長い睫毛を伏せ、俺のそれを口の中へと頬張る飛凰。信じられなかった。フェラチオって言葉は知っているけれど、まさか飛凰がそんなことを……

「あっ、あ……飛凰様、……駄目です、そんなことっ……」
「風呂に入っていないからか?」
「は、入りました……! 昨夜はちゃんと……」
「なら良いだろう。陽太のここからも石鹸の良い香りがするぞ。……すぐに淫らな香りになるだろうがな」
「やっ、あぁ……!」
 硬くなった俺のそれが、飛凰の口の中で舐め回される。膝枕という身動きの取れない状態で、めちゃくちゃに愛撫される。

「は、あっ……飛凰様、許して、下さ……あぁっ!」
 声が止まらない。そのせいで唇の端から涎が垂れ、飛凰の滑らかな頬を濡らしてしまった。
 味わうように、それこそ赤ん坊が甘えるように、飛凰は俺のそれを咥えて音を立てて吸っている。頬が少し赤いのは、きっと飛凰自身も高ぶっているせいだ。だけど──俺にも同じことをしろなんて、この人はきっと言わない。

「飛凰様っ、……出ちゃい、ますっ……飛凰様っ……!」
「このままイッてもいいぞ。ただし、俺の名前を呼びながら射精してくれ」
「ああぁっ……、ひ、飛凰様あぁっ──!」

 ああ、もう。またしても飛凰とエロいことをしてしまった。
 ていうかこの人、本当に男が大好きなんだな……。これから何度もこういうことをしていくんだろうけれど、本当に俺に務まるだろうか。
「どうした陽太?」
「い、いえ何でも。……ただ飛凰様の口に射精なんて、自分が許せなくて……」
「何だ、そんなことか。気にするな、俺がして欲しかったんだ」
 起き上がった飛凰が俺の頭を撫で、にこりと笑う。
「それよりも陽太、何か欲しい物はないか? 買い物に行こう。何でも好きな物を買ってやるぞ」
「え……」